『陽だまりの彼女』で3度目のタッグを組んだ上野樹里と小川真司プロデューサー/撮影:山口昌利

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松本潤&上野樹里を迎え、越谷オサムの同名小説を映画化した『陽だまりの彼女』が、10月12日(土)より公開される。本作で上野は、『のだめカンタービレ 最終楽章 前・後編』(09・10)以来3年ぶりの映画出演となった。プロデューサーは、『ジョゼと虎と魚たち』(03)、『グーグーだって猫である』(08)に続いて3度目のタッグとなった小川真司。互いに深い信頼関係を築いてきた上野と小川プロデューサーにインタビューし、最新作を含む3作の思い出を振り返ってもらった。

【写真を見る】上野樹里が演じたヒロイン真緒。ピュアな表情に胸キュン/[c]2013「陽だまりの彼女」製作委員会

『ジョゼと虎と魚たち』は映画デビュー作『チルソクの夏』(03)の次に出演した作品だ。小川は、オーディションを受けた時の上野をはっきり覚えていた。「当時、樹里ちゃんはまだ16歳でしたが、それは女子大生の役のオーディションでした。そこで池脇千鶴さん演じるジョゼを殴るシーンをやってもらったんです。助監督が池脇さんの役を務めてくれたんですが、樹里ちゃんはいきなり思い切りバチンと殴ったんです(笑)。普通は形だけ殴るふりをするんですけど。助監督が『本気でやらずに当てる真似だけでいいです』と言って、もう一度やり直しても、また再度思い切り殴っていました」。

上野は「今でもそうです」と申し訳なさそうに苦笑い。「私は『本番!』と言われてすぐに行けるようにと、常にリハーサルからエンジンを温めているんです。それが染み付いていて。でも、もしかして、あの時殴ってなかったら、オーディションには受かってなかったですか?」。小川が「いやいや、それはわからない」と首を傾げると、上野は「こんなことを言って、リハーサルでも本気でぶつ人が増えたらどうしよう」と言い、ふたりで大爆笑。小川は「その時、『上野樹里ってすごいぞ』と、スタッフや監督(犬童一心)たちは大爆笑したんです。だから、実際の役よりも樹里ちゃんはかなり若かったけど、彼女で行こうと決めました。女優としては新人だったけど、資質や雰囲気、本人の存在感が良かったのでしょう」。

その現場では、泣くシーンが印象的だったと言う小川。上野も「監督に、『泣けません』とストレートに言ってしまったんですよね。たぶん監督は、めちゃくちゃ困ったと思います。いろいろと考えたけど、本当にわからなくて。まだ、台本を読み解くスキルもなければ、恋愛における複雑な感情も当時は理解できませんでした」と振り返る。小川は「でも、その時、監督が何かを話したら、一発目でボロボロ泣き出しました」と言うと、上野もうなずく。「現場には脚本家の渡辺(あや)さんもいらして、犬童監督が一生懸命説明をしてくれましたが、その意味も50%しか理解できませんでした。ただ、自分に対して監督たちがとても親身に向き合ってくれた時間がありがたくて、あとの50%はその気持ちで行けました」。

5年後、同じ犬童一心監督作『グーグーだって猫である』で、再び顔合わせをした2人。「『ジョゼ』の時よりも、もう少し出番が増えました」とニッコリする上野。「毎回メンバーが変わるのが当たり前の仕事だから、また同じチームでお世話になること自体が珍しいし、うれしかったです」。小川は「樹里ちゃんは、森三中さんと一緒で楽しそうでした」と振ると、上野も「現場では、“森四中”みたいになっていました」と微笑む。小川が「その時も確か泣くシーンがあり、それを見て、やっぱりすごいなあと感心しました。キャリアも積んできた頃だったし」とほめると、上野は「でも、今も不安はあります」と告白。「慣れることは、絶対にないです。予期していたら泣かないし。なんとなく潜在意識が高まって、不安とかがあふれ出す感じに持っていきたい。常に、新鮮味を感じながらやりたいです」。

その後、『スウィングガールズ』(04)で脚光を浴び、同世代を代表する女優へと邁進していった上野を、温かい目で見守っていた小川。「ちょうど『グーグー』と同時期に『ラスト・フレンズ』(ドラマ)も見ていましたが、やっぱりこの人は、女優としてすごいと思いました。頑張っているなあと」と言うと、上野も「それって親心ですか?」とおちゃめに笑う。上野は小川について、こう感謝の弁を述べた。「小川さんとは今回3回目だから、一番お世話になっているプロデューサーだと思います。小川さんは映画にこだわり、作品の規模に関わらず、好きなものを作りたいという方なのかなと。そういう点では頑固にというか、曲げない人という印象が強い。すごい方です」。

最後に、本作をこれから見る人へ、メッセージをもらった。小川プロデューサーは「素直に見て、感動していただきたい」と訴えかける。「男女の単純な恋愛ドラマではなく、本当に一番大切なものは、普段の日常だったりするってことを描きたかったです。広い愛を広い意味でとらえてほしい」。上野も「こういう映画を、丁寧にこだわって作れたことがうれしい」と喜びを口にする。「普段は意識していないけど、日常の中に幸せがこんなに散りばめられているんだってことを感じてほしい。人を愛することは実にシンプルなことだけど、経験や年齢を重ねていくと、すごく難しくなってしまう。でも、好きな人を好きでいられたら、それだけでいいじゃないって。そういうふうに生きていけたら、すごく素敵だと思います」。【取材・文/山崎伸子】