6月のコンフェデレーションズカップで日本と対戦し、4−3と逆転で勝利したイタリア。そのイタリア代表の若きアタッカーとして将来を嘱望されているステファン・エルシャラウィが、その目で見たザックジャパンの戦いについて、分析。ミランの攻撃のキーマンでもある20歳のFWが見た日本の長所と課題とは。

―― エルシャ(エルシャラウィの愛称)、W杯を来年に控えた今、アルベルト・ザッケローニ監督が率いる日本代表について話を聞きたいと思います。来年のW杯ブラジル大会で難敵のひとつとなるはずの日本代表をどう見ているか。実際、6月のコンフェデ杯で、イタリアは徹底的に苦しめられました。ザック率いるチームを間近に見た印象を詳しく聞かせてください。

「本当に心の底から驚いた、驚かされたというのが偽らざる感想だよ。そのイメージは3カ月以上経った今もまだ鮮明に残っている。日本戦、ベンチにいた僕は戦況をきわめて客観的に見ることができた(エルシャラウィはブラジル戦とウルグアイ戦に出場)。本当に素晴らしいチームだとチームメイトとも話したよ。

 きっとイタリアのメンバーだけではなく、あの試合を観た世界中のサッカーファンが同じような印象を抱いたはずだ。技術的に彼ら一人ひとりが高いレベルにあるのは知っていたけど、まさかチームとしてもあれだけの高い水準にあるとは思わなかった。それだけでなく、見劣りすると言われていたはずのフィジカルでも、あの日の日本代表は明らかにイタリアを上回っていた。

 たしかに、0-2とイタリアがリードされる状況になってから、日本に「試合運び」と「守り」のミスが少なからずあったのは事実かもしれない。それでも、僕らがより強く感じたのはむしろ、リードしている状況でも果敢に攻めてきた彼らのスピリット。本当に脅威だった。

 ただ、サッカーというスポーツは往々にして、うまくいくときもあればそうじゃないときもある。"日本はうまくゲームを終わらせることができなかった"という見方を否定はしないけど、注目すべきは前半の20分間、W杯優勝4回のイタリアがまったく何もさせてもらえなかったということ。アズーリはまさに混乱してしまっていた。

 試合後にプランデッリ監督が言ったとおり、『何をどうしていいのかまったく分からない状況だった』。それはイタリアの自滅というよりも日本の強さに起因していたと思う。結果的にはイタリアの逆転勝利だったけど、それは幸運もあってのこと。あの試合に勝つべきは日本だった。事実、勝ったとは言え、体力を消耗した僕らは、その代償を後の試合で払うことになったんだ」

―― 最も印象に残った日本の選手をひとり挙げるとすれば?

「それはやはり本田(圭佑)だよ。初めて"ナマ"で彼を見たが、噂に違わぬというか、それ以上の強烈な印象を受けたというのが実際のところだね。キープ力は突出しているし、走れるし守れる。さらにチームのために犠牲を厭(いと)わない。FKの威力は周知のとおり。しかも彼は、あれだけ激しい試合であっても冷静さを失うことがない。サッカーをやったことがある人なら分かると思うけど、これはそんなに簡単なことじゃない。しかもあのレベルでの試合だからなおさらね。

 もうひとつ彼の素晴らしいところを挙げると、それは絶対にボールを『ムダにしない』、つまりバックパスや横パスに逃げないってことだね。

 その彼がミランに来てくれたら僕は本当に嬉しく思うし、来年の1月が楽しみだよ。彼の力は必ずや今のミランにとって有益だと思う」

―― 一方、ザッケローニ監督について、彼のサッカーをどう見ていますか? 先のコンフェデ杯でも少し話をしたと聞いていますが。

「たしかに試合の後で話はしたけれど、ほんの挨拶程度のものでこれといった"ネタ"はないよ。残念ながら(笑)。

 ただ、以前、彼のインタビューを読んだことがあって、僕の記憶が間違ってなければ、彼はこう言ってくれていた。『エルシャラウィは私のサッカーを実践するうえで理想的なFWだ』と。ビックリしたよ。なにせ僕が小さい頃から応援していたミランの監督経験者、僕が9歳だった99年、スクデット獲得を成し得てくれたザッケローニ監督の言葉だからね。これ以上光栄なことはない。

 とにかく、僕にとってザックは半ば雲の上の人で、イタリアのサッカー史にその名を刻んでいる名将。ここ数年はその評価が分かれていることも知っているけど、確かなのは、今の彼が日本代表で素晴らしいサッカーを実際に見せているという事実。コンフェデでの僕らとの試合が示すように、失点を恐れずに果敢に攻めるサッカーは本当に魅力的だと思う。何を仕掛けてくるか分からない、その怖さが彼のチームにはある」

―― その日本とイタリアは来年のW杯で再び顔を合わせる可能性もある。もう一度ザック率いる日本と対戦するとなれば、果たしてイタリアはどういった戦い方で臨むべきと思いますか?

「この前のような失敗だけは絶対に犯さない、犯してはならないということだね。そのうえで、僕らが採る策は......、といっても一体どこまで言っていいのか分からないけど(笑)、とにかくまずは日本に主導権を渡さないような展開に持っていくだろうね。

 そして、あの試合で彼らが存分に示してみせた"速さ"と"激しさ(インテンシティ)"をベースとした密度の濃い攻めの形をどう防いでいくかが鍵になると思う。

 ただ、コンフェデ杯そのものに最大限の敬意を払うのは言うまでもないことだけど、それでも、W杯の本番はまったくの別物、ということだね。もっとも、僕自身はW杯をまだ一度も経験したことはないんだけど(笑)。

 でも、ピルロやデ・ロッシ、ブッフォンといった選手達は、それこそW杯を何度も経験するどころかそのタイトルを獲っていて、彼らと話をしていると、"別物"ってことの意味を理解できる。

 とにかく、僕の場合はケガ(左足指の骨折)を一日も早く治して、コンスタントにプレイして、プランデッリ監督を納得させる数字を残さなければならない。何と言っても僕は"当落線上ギリギリ"のFWだからね」

―― そのイタリア代表については、現状、ファンのみならず識者の間で最も期待されているのがあなたの成長です。そして、あの問題児、マリオ・バロテッリ(ミラン)が少しでも"大人"になること。その一方で、ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)やマノーロ・ガッビアディーニ(サンプドリア)、アレッサンドロ・フロレンツィ(ローマ)といった若手が台頭してきています。加えて、膝の故障が癒えたジュゼッペ・ロッシ(フィオレンティーナ)が復調し今季開幕から7戦で5ゴール。セバスティアン・ジョビンコ(ユベントス)も本来のキレを取り戻しつつある。ブラジル行きのFW枠はおよそ「5」。かつてないほど競争が激化していますね。

「その通り。実際のところ今の僕は"当落線上ギリギリ"どころかその線にすら届いていないかもしれない。若手だけじゃなく、オスヴァルド(サウザンプトン)やアルベルト・ジラルディーノ(ジェノア)、ファビオ・クアリアレッラ(ユベントス)、それにルカ・トーニ(ヴェローナ)といったベテランもゴールをコンスタントに決めている。さらにフランチェスコ・トッティ(ローマ)もいる。37歳にしてあれだけのプレイができるのは本当にスゴい。インテル戦(第7節)のプレイはまさに圧巻だった。そしてアントニオ・ディナターレ(ウディネーゼ)もいる。あの人のうまさ、ボールをGKの届かないポイントに置く技術はまさに芸術だね。

 それに、ミランのチームメイト、(アレッサンドロ・)マトリもこれから調子を上げていくに違いないし、ケガが癒えれば(ジャンパオロ・)パッツィーニも必ず候補として割って入ってくる。競争は激しい。大切なのは、僕も含めたFW陣がどれだけプランデッリ監督を選手選考で"困らせるか"ってことだね」

―― その競争がいつになく激化する中、それでも多くの者達が"エルシャ、バロテッリ、ロッシ"からなる前線3枚を求めています。

「悪くないんじゃない?!(笑) というか、マジメな話、戦術的にもハマると思うな。言ってみれば昨季のミランと同じ形だ。きっと面白いサッカーを見せることができると思うよ」

―― エルシャのような若い選手にとって"イタリア代表の主将"ジャンルイジ・ブッフォンの存在は一体どういうものですか? 多くのことを学んでいると思いますが。

「多くのことどころではなくて、ブッフォンから学ぶことは無数にある。ポジションは違うけど、具体的なプレイではないとしても、やはり"超一流"と呼ばれる選手の凄味を目の当たりにできる。あれだけ長く世界ナンバー1GKの座に留まり続けるのが一体どれだけ凄いことか。

 毎日のトレーニングに全身全霊を傾ける、その真剣さが他の選手とはまるで違う。それに、ブッフォンは超のつく"勝利マニア"なんだよ。紅白戦だろうがミニゲームだろうが、負けるともう何というか、それこそ手がつけられない危険な状態になる(笑)。とにかくチームにとってデカイ存在だよ。あの人が後ろにいるだけで僕らフールドプレイヤーが抱く安心感はとてつもなく大きいからね」

―― では、10月に21歳になるエルシャが目標とする選手、もしくは憧れの選手は誰ですか? 

「それはもう"あの人"しかいない。最初にカカ、その次がカカ、その次もカカ!!! 僕は小さい頃からずっとミラニスタで、カカと一緒にプレイすることが夢だった。今、毎日のトレーニングを彼と一緒にできることはまさに夢の実現になるんだけど、それでもまだ夢を見ているような感じだよ。

 カカのプレイすべてをコピーしようとしているよ(笑)。彼のようなキャリアを僕も歩んでいけたらと思うし、正直なところ、それこそが紛れもなく僕の夢だ。

 カカから多くを学びながら成長したいと思うし、実際に結果を残してミランを引っ張って、チームが勝利し続ける原動力になりたい。そして代表に招集されて来年6月のW杯へ行く。それが難しいことは百も承知だけど、だからこそ挑む価値がある。このケガが癒えたら、出遅れた分を取り戻すために人の倍以上は走らないといけないと思っているよ。そして、その先にあるブラジルへ、それこそ『チームメイトの本田』と一緒に行けたら最高だね」

プロフィール 
ステファン・エルシャラウィ
Stephan El Shaarawy
1992年10月27日イタリア生まれ。父はエジプト人、母はイタリア人。ミラン所属。各年代別のイタリア代表に選ばれ続け、2012年にA代表デビュー。コンフェデ杯ではブラジル戦、ウルグアイ戦に出場した。昨シーズンはセリエAで16ゴールを決めた。

クリスティアーノ・ルイウ●取材・文 text by Cristiano Ruiu 
宮崎隆司●翻訳 translation by Miyazaki Takashi