NTTドコモは冬春モデルとなる全16機種の新型携帯電話を発表したが、その席上、加藤薫社長は「謝罪と弁明」に追われた。

 9月20日、満を持して発売にこぎつけた米アップルの「iPhone5s」が発売直後から在庫切れで、待ち侘びていたユーザーからの不満が噴出しているからだ。しかも同社によれば、全国に約2400あるドコモショップのうち1000店舗でしか取り扱えなかったという。

「入荷待ち」は同製品を売るソフトバンクやauも同じ。にもかかわらず、特にドコモは予約者の手元にも届かない率が高いのでは? とユーザーからの恨み節も多い。どうしてこんな事態になっているのか、業界関係者が推察する。

「アップルが希少価値を高めるために出し惜しみしているとの説もあるが、そもそもiPhoneの供給体制は、まとまった数の注文が上がってきてから、その割合に応じてキャリアに卸していく。ソフトバンクやauは実際のオーダー以上に注文を入れているのに比べ、ドコモはお客さんの潜在ニーズを汲まずに慎重になり過ぎているのではないか」

 iPhone販売で先行する2社に対し、ドコモが対アップルに不慣れなのは仕方ない。しかし、大幅な供給遅れが響き、結果的にMNP(番号持ち運び制)による顧客流出に歯止めがかからず、9月の契約純増減数も6万6800件のマイナスになってしまった。

 加藤社長は「10月中にはすべてのドコモショップでiPhoneを販売できる体制にしたい」と語り、冬春の新型スマホとともに強力にプッシュしていく構えをみせた。

 では、iPhone以外の冬春モデルの評価はどうか。モバイル評論家で青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏に聞いた。

「富士通、シャープ、ソニーの日本ブランド3端末を『お勧め商品』に据え、フル充電で3日間の長時間使用が可能だったり、見やすい大画面をアピールしたりしていますが、いまやどのキャリアを選んでも端末の性能は一緒。最後は通信費や通信速度で差別化する以外にないのです」

 今回、ドコモは受信時に最大毎秒150メガビットのLTE(高速データ通信)対応を打ち出しているが、ユーザーの体感速度は使用環境によってまちまち。ソフトバンクやauもネットワークの改修・整備を進める中、どこまで差別化が図れるかは未知数だ。

 苦戦続きのドコモに果たして起死回生策はあるのか。前出の木暮氏は「もう一度、ドコモのブランド力を高めるしかない」と話す。

「地方都市ではまだドコモの支持は絶大で、『歴史が古く安心のドコモを選ぶ』という保守的なユーザーは多い。通信費の高さや使いにくさから、スマホに切り替えたくない“ガラケー派”もたくさんいますしね。そうした人たちの要望を汲んだ機種やサポート体制が提供できなければ、ますます他社に流れてしまうでしょう」(木暮氏)

 ドコモの冬春モデルでは、個人向けのスマホ事業から撤退したNECカシオとパナソニックがガラケーの2機種を発売するが、「従来型モデルの焼き直しで、無理やり投入している感じ」(業界関係者)との酷評も聞こえてくる。

「スマホやタブレットとの2台持ちを想定してスペックを落としているのは仕方ないとしても、もう少し通話機能に特化したり、デザイン性に優れていたりといった、ガラケー派を喜ばせる機種が出てくれば人気になると思うのですが……」(木暮氏)

 スマホ時代でも消えないガラケー需要。ニッチな分野にこそ他社との差別化を図るチャンスが隠されているのかもしれない。