『官僚たちの夏』

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これまでに読んだ本について、特に傾向はないものの歴史物や戦記物などを比較的多く読んできたと思う。振り返ってみて、記憶に残っている本は幾つもあるが、特に強く影響を受けたものを簡単に取り上げてみたい。

天下泰平のために人生を捧げる生き様

第一は、『徳川家康』(山岡荘八著)である。戦国の世、信長の全国制覇に向けての戦いの連続、秀吉による全国統治の動きと朝鮮出兵と戦いは続き、家康はこれらを踏まえつつ無私の境地に立って戦乱の無い平和な世の中を築きたいとの一念で、ライバル達を次々に従え、豊臣家一党を打ち破って武士の頂点に立つ。更に、平和が続くよう統治システムとしての幕府体制を整備し、徳川家本家と分家の関係を定め、宮中との関係も整えて、徳川幕府300年の礎を築く、といった家康の人生を記した物語。

記述は、多分に倫理的であり、説教くさいものではあるが、天下泰平のために人生を捧げる生き様が感じられ、長編ながら一気に読み下させるだけの本であった。家康の「人の一生は、重き荷を負うて遠き道を行くが如し」の言葉に感動し、自分も人のために何かをしたいと心に誓わせる本である。

「自分は、甘えている。まだまだ工夫が足りない」という気に

第二は、役人を目指すきっかけとなった、『官僚たちの夏』(城山三郎著)である。戦後の高度成長期における通商産業省を舞台にした物語だが、「天下国家を議論する」「天下国家のために働く」「無定量・無際限に働く」などの言葉が並び、学生として将来の職業選択を考える際に、考えさせられた1冊である。開国か保護かの政策方針の対立とそれに絡む人事が描かれている。

技術の進歩によって、財・サービス、産業、経済及び社会が大きく変化している現在において、旧来の政策、制度、予算などを見直し、経済・社会発展を導く大掛かりな改革が必要とされる状況において、闊達に政策を議論し、是々非々で対応していくことは現在でも同様と感じさせる。体育会系で育ってきた当方は、日々の練習や合宿を通じて最後に目標を達成するといった働き方に惹かれ、大学で理科から文科に進路を変更し、公務員を目指すきっかけとなった本である。

第三は、サラリーマンとして壮絶な生き方をした方の自叙伝である『ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない』(佐々木常夫著)である。3人の子供の内の1人が自閉症であったことから、家族内にいろいろなことが起こるが、著者は、それらの全てに対処し、炊事、弁当作り、掃除・洗濯などの家事をこなしつつ仕事でも成果を上げて、会社の同期では1番に取締役となるなど、壮絶な人生を過ごしている。

職場での仕事の仕方、仕事の管理の仕方を見直し、職場全体で残業をなくして定時退社を実現することによって家族との時間を作り出すなど、仕事及び家事のマネジメントに関する内容でもある。本書を読んだ後には、「自分は、甘えている。まだまだ工夫が足りない。現状を変えなくては!」と考えさせられる1冊である。同じ著者の『部下を定時に帰す仕事術』も出版されており、仕事の管理方法とワークライフバランスの実現のための指南書としている。

総務省(審議官級)S

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