【今回の質問】

前回、初心者にもわかりやすい株式投資の指標を2つご紹介なさっていましたが、これだけでは選びきれませんでした(笑)。多少専門的でも、もっと絶対的に信用できる方法はないものでしょうか?(会社員・33歳)

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

 私は株式投資について長年、疑問に思っていたことがありました。それは「企業研究をしてから銘柄を選ぶ方法」と、「適当に銘柄を選ぶ方法」のどちらが儲かるのか? ということ。そして、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のヒットで資金に余裕ができた時、疑問の答えを知るべく実験してみました。

 企業研究して選んだ4銘柄と、目をつぶって「えいやっ」と買った4銘柄。投資額はそれぞれ合計100万円ずつ。半年後の株価は、研究した4銘柄は計70万円、適当に選んだ4銘柄は計110万円となりました。

 数字だけ見ると、「えいや」のほうが儲かったのです。しかし、実際は研究した銘柄が全部ダメだったわけでも、適当に選んだ銘柄がすべて良かったわけでもありません。結局、「銘柄選びに完璧な方法はない」というのが率直な感想でした。というのも、株価は経営の状態や業績のほかにも、雰囲気やブームで乱高下します。例えば、私がこの実験をした当時は「アニメ業界が有望だ」と言われ、業績の良し悪しにかかわらず、多くの銘柄が値上がりしました。

 ところが、翌年にはその多くがこれまた業績にかかわらず一斉に暴落。となると、今、「アベノミクス銘柄」と持て囃されている銘柄の先行きとて、全く予断を許しませんよね。とはいえ、銘柄選びに完璧な方法がなく、未来が不確かだからといって、株式投資をやめるべきだとの結論には至りません。なぜなら、投資によってお金を?働かせる?ことができるからです。

◎「預金で2倍」には3600年の計算

 実は、お金には「働くお金」と「働かないお金」があります。その違いは、お金の持つ?自己増殖機能?を生かしているかどうかです。

 例えば、手元の100万円をタンス預金にしておくと、お金は永久にそこにあるだけで、1円たりとも増えません。お金は場を与えられないので、働かないわけです。

 一方、株式投資はお金を払って株を手に入れます。すると、株主でいる間は100万円分の株に相応する配当や株主優待がもらえますし、株価が上がればキャピタルゲイン(売却益)を得ることもできます。つまり、株式市場という場に送り込むことで、お金は自ら働き、増殖しようとしてくれるのです。

 銀行預金も大別すると、お金に働いてもらう側に入ります。しかし、この低金利時代。10万円を2倍にするためには何年かかるのやら……。年利0.02%の普通預金のケースを計算してみたのですが、ざっと3600年もかかりました(笑)。

 もちろん、株価には常に下落リスクがつきまといます。ですが、政府がインフレ目標を打ち出しているように、今後は特に通貨の価値が下がっていくことが予想されます。タンス預金にすべてを置いておくよりも、投資をしたほうが賢明な判断ではないでしょうか。

 こうした前提を踏まえたうえで、前回に引き続いて「買いのルール」を話したいのですが、近年、世界のプロ投資家たちが最も注目している指標があります。それがROE(株主資本利益率)と呼ばれるもので、私も前回紹介したPBR、自己資本比率に加え、?第3の指標?として重要視しています。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

◎3年連続10%以上は「超優良企業」の目安

 ROEは企業の収益性を測るもので、自己資本(株主資本)が企業の収益をどれだけ生み出したかを示します。「ROE=1株当たり純利益(EPS)÷1株当たり自己資本(BPS)」との計算で導き出すのですが、この数値もPBR同様、すぐに証券会社のサイトなどで入手できます。

 なぜ重視するかと言えば、簡単に弾き出しているように見えるROEですが、計算式を紐解くと、「売上高利益率」「総資産回転率」「自己資本と総資産の割合(財務レバレッジ)」などを踏まえた?複合的な指標?だからです(右図参照)。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

 前回、PBRの重要性を合格倍率に例えましたが、ROEは人気や実力などすべてを踏まえて比較できる「偏差値」のようなもの。過去3年間、安定的に10%以上であれば超優良企業と言えます。

 また、株価の割安性を測る指標としてはPER(株価収益率)の有用性も高いのですが、私はPERよりROEのほうを優先的に見ていますので、詳しい解説は省きたいと思います。

 最後に、初心者が一番やってはいけないのは危ない会社に手を出すこと。そのために見てほしいのが「疑義注記」です。企業は監査法人から「企業の継続性に疑義あり」と指摘された場合、決算短信や有価証券報告書などにその旨を注記することが義務づけられています。手近なところでは『会社四季報』に、疑義注記企業の一覧があるのでチェックしておきましょう。

女子高生と山田真哉の「5分間会計学」

『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』

山田真哉

一般財団法人芸能文化会計財団理事長・公認会計士・税理士。160万部突破の『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』ほか著書多数。最新刊『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』(小学館刊、1365円)も5万部突破!