TBS「壮絶人生ドキュメント 俺たちはプロ野球選手だった」(8日放送分)は、元プロ野球選手たちが送る第二の人生にスポットを当てた不定期のシリーズ番組だ。第4弾となった今回は、西崎幸広氏(日本ハムファイターズ)や宮下昌己氏(中日ドラゴンズ)らに加え、オリックス・ブレーブス、ヤクルトスワローズで活躍した高橋智氏の“その後”も伝えている。

「デカ」の愛称で親しまれた長身の大型スラッガー・高橋氏。番組では「怪力の元スター選手 3度の就職の果てに……」と題し、2001年 35歳で受けた戦力外通告から十数年、その後の人生を追った。

引退後、野球関係の仕事が沢山来ると思い込んでいた高橋氏だったが、実際には野球中継の解説が月に一回ある程度だったという。その3ヶ月前には妻・利江子さんと再婚し、長男も誕生していたが、高橋氏は当時を「その時期は無ですよね。魂が抜けたって感じ。何をしていいか分からない。どうしたいのか自分の中でプランもないし、助言をしてくれる人もいない」と振り返った。

また、この時の様子を妻は「野球にこだわらないとは言ってたけど、こっちから見てると十分こだわってる。とりあえず働けって。何でもいいから」と話すも、高橋氏が最初に就いた整体のアルバイトではやる気も感じられず、客に元プロ野球選手だと気付かれることに不快感を示したという。

「一から職種が違うところ行ったら、野球のことなんて関係なくやらなきゃいけないんですけど、ガタイがいいのですぐばれて“何してんの?”って言われたり。野球選手のプライドのまま入っていったんで。ツンツンしてたでしょうね」と語る高橋氏は、現役時代のまま金銭感覚が狂っていたこともあり、引退後も後輩と食事に行くや見栄を張って高額な食事代を一人で負担するなど、家庭を顧みない生活を続けたばかりか、満足に仕事も続かず、自宅では愚痴ばかり――。

そんな姿に痺れを切らし、怒った妻が「いつになったら普通に生活できるの?あなたは5年後も10年後もプロ野球選手だって言われ続ける、しょうがないじゃない。全てを受け入れないと一人前の社会人になんてなれっこない」(再現VTRより)と叱咤したことで目が覚めた高橋氏は、「野球少年からやってきて、世の中を何も知らないで(プロ野球に)入って給料貰って。“野球終わりました。さあ、どうする”って、なんにも分からず中途半端に金遣いの荒さだけは習得して、遊びも。やっぱり嫁さんの助言で目が覚めた」と苦笑い。

その後、機械部品の加工工場に正社員として就職。38歳になった高橋さんは25万円の給料を遣り繰りして愛知県にマイホームを購入するなど、第二の人生でも安定した基盤を築こうとしていた。しかし、41歳の時、リーマンショックで仕事が激減すると月給も減った。「リーマンショックみたいなカタチで明日から来るなとか、仕事がないとか、それでヘタしたらクビ切られる。世の中怖いというか。身に染みる思いというか」と振り返った高橋氏は、ここで3度目の転職に踏み切り、現在は業務用エレベーターの点検員として働いている。

リーマンショックから5年、更なる安定を求めた高橋氏は、「一台新しいエレベーターがきました。それを毎月点検する。その後、点検料が入ってきますから。それが1台、10台、100台、1000台、前の職業に比べれば安定はしていますよ」と語り、「イベントの時だけ」と前置きした上で妻と3人の子どもを連れ、楽しそうに回転寿司店へと入っていった。