「特定口座の場合、同じクロス取引でも現物取引で売り買いすると、株の受渡日が同じ日になってしまい、取得単価は『売った株の取得単価+現物買いした株の単価÷2』になります。100円で取得した株を200円で現物売り+現物買いした場合、新たな取得単価は200円ではなく平均値の150円ということです。取得単価を現在の株価まで引き上げるためには信用取引を使ったクロス取引が一番ですね」と窪田さん。

ややこしい話のようだが、要するに「現物売りで利益確定+同値で信用買い→翌営業日、信用建て玉を現引き」というのがベストチョイスということである。

「株式の取引で実際の代金の受け渡しは、約定日から3営業日後の『受渡日』。2013年の最終受渡日は12月30日(月曜日)なので、12月25日(水曜日)が年内利益確定のタイムリミットになります」(窪田さん)

そう考えると、12月中に株価が高くなったところで利益確定を済ませたほうが無難といえるだろう。



知りたいことBEST2 今、儲かっている株はいつ売るべき?

利益が出ている株は、年内に全部売り!がファイナルアンサー

損失を危惧した税金の払い渋りは愚の骨頂

かかる税金が来年2倍に跳ね上がる以上、「含み益のある株は今年中に利益を全部確定しましょう」(増田さん)。

なかには「今後、損するかもしれないから利益を確定して税金を払うのはイヤ」という人もいるはず。

「しかし、来年以降、株で儲かるか損するかは誰にもわかりません。損失に関しては、3年間の繰越控除で将来の利益と相殺することもできます」と増田さん。

ちなみに年間利益が20万円以下なら確定申告の必要はない。つまり、毎年20万円以下ずつ利益確定して税金を払わないという秘策(?)もあるにはあるが、確定申告をしないと損失の繰越控除ができないのが難点だ。

知りたいことBEST3 配当の税金ってどうなるの?

配当金の支払日の税率が適用される!

10月期決算会社の配当金から新税率適用(悲)!

10月期決算の株を保有している人には悲しいお知らせ。というのも、株の配当金に対する税金は「配当権利付き最終日」ではなく、「支払日」で決まる。配当支払日は通常、定時株主総会の翌日。つまり、多くの銘柄では来年1月に株主総会が開かれる10月期決算の会社の株主配当を受ける人が、税率20%超の適用を受ける?犠牲者(!?)〞になる。



窪田朋一郎(くぼた・ともいちろう)
松井証券 シニアマーケットアナリスト

2001年、松井証券入社。ネット証券で顧客に対応してきた長年の経験や緻密な情報分析を武器に、株式市場や個人投資家の動向に精通。今、最も旬な人気株、テーマを語らせたら業界随一。


増田雄亮(ますだ・ゆうすけ)
松井証券 営業推進部

2008年、松井証券入社。営業推進部にて、顧客サポート関連を中心に個人投資家のための業務に邁進する日々。株式投資からFXまで幅広く精通するオールラウンド派。



兜町の番猫ミケコさんの「証券税制をめぐる業界、財界裏事情」を見てきたにゃ♪

優遇延長よりNISA…財務省の作戦勝ち?

証券優遇税制が導入11年目の今年末で打ち切り。株の値上がり益や配当の軽減税率10%は、来年から20%になるんだにゃ。優遇税制は時限立法で、数回延長されたけど、今回は予定通り年末に終了ってわけ。与党だった当時の国民新党の自見庄三郎郵政・金融相と亀井静香代表が抵抗して財務省が折れたんだにゃ。

財務省の言い分では、来年からNISA(少額投資非課税制度)が始まるから、軽減税率が廃止でも問題なし。前回の延長のときみたいに、活発に動く大物政治家もいにゃい。麻生財務相は金融相も兼務して、財務省寄りだし。

証券では去年の夏まで、ネット証券が共同で署名を集めたり、「配当だけ税率10%維持」を政府に働きかける動きもあったけど、自民党への政権交代とアベノミクス開始を機に、いつの間にか消えたの。株価も回復して、財界も関心が薄そう。

「財務省には、優遇延長よりもNISAの拡充を認めてほしい」ってのが証券会社の人たちの本音みたい。最大10年の非課税適用を無期限にして、毎年100万円の投資枠も拡充するほうがプラスになるって判断だにゃ。いつの間にか優遇税制の代わりがNISAっていう流れをつくった財務省の?猫だまし〞かにゃあ。

この記事は「WEBネットマネー2013年11月号」に掲載されたものです。