AFC U-16女子選手権決勝で日本は北朝鮮と激突。PK戦にもつれる大混戦を制し、大会2連覇を達成した。

 中国・南京で行なわれた決勝は、これまでの好天と打って変わって雨中決戦となった。

 フィジカルを生かした当たりの強さとスピードに定評のある北朝鮮。日本は多彩な攻撃と前線からのプレスで対抗しようとした。しかし、水分をたっぷり含んだピッチと、北朝鮮のハイプレッシャーに苦しみ、前半はにらみ合いのスコアレス。後半18分、代わって入ったFW児野楓香が立て続けにシュートを打つと、そのこぼれ球をMF三浦成美が押し込み、待望の先制点を掴んだ日本だったが、その8分後に同点弾を浴び、試合は振り出しに。一進一退のまま、PK戦へと突入した。

 PK戦は時の運。それでも互いに一歩も譲らない。日本は6人目まですべて決めていた。そして北朝鮮の6人目。「自分の思った方に飛びました」というGK松本真未子がセーブし、その瞬間日本の優勝が決まった。

 苦しい戦いとなった裏には、大会の組み分けも大きく影響した。グループリーグのグアムとの初戦は19-0、続くイランとの第2戦も9-0と圧倒的な強さで決勝トーナメントに勝ち進んだ。近年力をつけてきているタイが準決勝に初進出してくるも、日本の敵ではなかった。ピンチらしいピンチもなく6-0で快勝した。

 実力差が激しいことはアジアの課題でもあるが、グループリーグ内ではよくあること。

 しかし、まさか決勝までガチンコ勝負をせずに勝ち上がることなど、これまでは考えられなかった。今大会は来年3月にコスタリカで行なわれるFIFA U-17女子ワールドカップの予選を兼ねている。上位3チームにその出場権が与えられるわけだが、組み分けが決定した段階で、日本の決勝トーナメント進出は固かった。

 実際、ワールドカップ出場権は誤算なく手に入った。接戦を制した勝利はチームをより強固なものにするが、圧勝は時にチームに影を作ることもある。ましてやこのチームは初めてタイトルに挑むのである。決勝前に「本当は実力の拮抗した相手と戦っておきたかった」と語った高倉麻子監督の言葉にも頷(うなず)ける。北朝鮮は身体がブレず、空中戦はもちろん、競り合いになれば日本は劣勢に陥る。予想通り、押される展開になり、ゲーム内での修正はできなかったが、明確な課題となった。その中で勝利を手繰り寄せたことは自信につながるはずだ。

 キャプテンを任された杉田妃和は、今年2月に生まれたこのチームを牽引してきた。昨年のFIFA U-17女子ワールドカップベスト8のメンバーだった杉田は、当時のチームでは15歳の最年少で出場。それも世界大会の直前に招集された新戦力としてだった。しかし、緊張と初めて経験する世界大会への戸惑いから、自分の考えを言葉にすることができなかった。

 そんな経験を経て、今大会の杉田は人一倍声を出した。「言いにくいことも頑張って言えるようになってきました」(杉田)。

 プレイでも成長が著しかった。トップ下やボランチをこなす杉田が力を発揮するのは攻撃。イラン戦でマンツーマンをはられた杉田は自分が引きつけ役になり、有効にスペースを生み出した。

 準決勝では、自身のドリブルからのシュートはもちろん、左右サイド奥への散らしや、強気など真ん中をぶち破る前線へのキラーパスなど、高いポテンシャルを見せつけた。決勝では、攻撃のみならず、深い位置までボールを追い、守備にも貢献した。大会MVPを獲得した杉田の成長は、来年の世界の舞台に向けて、大きな追い風になるだろう。

 杉田が自由にプレイできている時間帯は、日本に流れがきている時。しかし、杉田のプレイが際立てばそれだけマークも厳しくなる。北朝鮮戦では、これまでのように自由自在にはプレイさせてもらえなかった。本人も痛感しているところだ。「攻撃に厚みを持たせることができなかった。メンタルの部分もそうですが、体力面でも上げていかないといけない」(杉田)。決勝の90分間を戦い終えた後は、決めきれなかったことを悔やむ気持ちが湧き上がった。それでもキャプテンとしてチームメイトに声をかけた。「ここで負ける訳にはいかない。みんなで勝って帰ろう!」。PK戦一番目のキッカーは杉田が担った。「緊張しました(苦笑)。決められてよかった」

 初めてのことだらけの末に掴んだアジアチャンピオンに喜びもひとしお。表彰台の上で、キャプテンとして重大な任務――優勝カップを受け取った杉田は満面の笑みで高々とそのカップを突き上げた。杉田には世界大会に置いてきたものがある。ベスト8というポジションは納得のいくものではなかった。敗戦の形も、自分のプレイもすべてに悔しさが募る。今度は自分たちが一から積み上げて再挑戦できるのだ。

 だが、彼女たちにはさらなる試練が待っている。本来であれば来年の秋に開催されるワールドカップが、今回は3月開催と、半年以上早まっているのだ。それだけ強化する期間が短くなる。「だからしっかり集中すること。もっと上のプレイを目指したい」(杉田)。すでに逆算してイメージはできている。

 "チャンピオン"。この響きに憧れを抱かないものはいない。実際にアジアの頂点に立ってみて新たに思うこと。――次は世界で。若いなでしこたちの次なる戦いはすでに始まっている。

早草紀子●文 text by Hayakusa Noriko