2012年、カンボジアは加盟以来2度目の議長国を務めた。首都プノンペンには、ASEAN10カ国のほか、日中韓、米国などASEANパートナーたちの旗がひるがえった=プノンペン市内で【撮影/木村文】

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朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住。現在は現地のフリーペーパーの編集長を勤める木村文さんのカンボジアレポート。今回のテーマは、「国際競争力レポート」最新版(世界経済フォーラム)に見る、ASEANの各国の評価と今後の課題について。

外交は黒澤の羅生門!?

 もう10年以上前になるが、ブルネイで開かれていた東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議を取材したときの話だ。そのときの外相会議の焦点は、南沙諸島の領有権をめぐる加盟各国の行動規範が合意されたことだった。

 当時、私たち日本人記者の間で、「ASEANのスポークスマン」と呼ばれていたのが、フィリピンのシアゾン外相。日本語を巧みに使い、欧米人記者をそっちのけで日本人記者を厚遇してくれた。

 その日も、会議を終えて出てきたシアゾン氏を会議場外で捕まえた。「行動規範ができましたね。各国の合意がとれたということですね」。そう尋ねる私たちにシアゾン氏は「「いやあ、クロサワの羅生門ですよ」と、ひとこと。もちろん日本語で。

 クロサワの羅生門? 芥川龍之介の小説「藪の中」を原作とする黒沢監督の映画「羅生門」。そこまでは知っていたが、これと南沙諸島をめぐる行動規範に何の関係が……。ぽかんとしていると、シアゾンさんはこう言った。

「外交の文書はね、国によって、読む人によって解釈が違う。でも、そういう曖昧さでいいのです。映画・羅生門のテーマは、事実はひとつでも見る人によって説明が違うというものでした。外交も同じ。合意とはそういうことです」

 これぞASEAN流。設立から40年余り、何があろうとも毎年集まる東南アジア諸国の首脳たち。ムダと言われようと、随行の閣僚たちがゴルフセット持参だろうと、北朝鮮やアメリカに主役の座を奪われようと、毎年同じ記事が使えると記者たちに悪態をつかれようと、とにかくASEAN流で、国のトップが一つの机を囲んで着席し続けた。

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