米監督が日本の“うつ”に迫る、心の風邪こじらせた人たちに密着。

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10月19日(土)より渋谷アップリンクほか全国順次公開となるドキュメンタリー映画「マイク・ミルズのうつの話」の先行上映イベントが、東京・原宿にあるVACANTで行われ、会場には100人近い客が詰めかけた。上映後は、午前1時30分を回っている米カリフォルニアから、監督であるマイク・ミルズとスカイプ中継で出演。会場の観客と交流を図った。

日本のうつをテーマに映画を撮った理由として「日本人の友人が多く、日本には良く行く。友人女性が抗うつ剤を飲んでいるのを見て、アメリカから発信された薬が日本に入っていることに興味を持った」と説明。さらには「Does your soul have a cold?」というキャッチフレーズを聞いて興味を持ったことも明かした。

出演者たちを決めるに当たり、日本人プロデューサーである保田氏は「オーディションというかたちで色々な人に会ったが、1人の方が当日約束の時間に辿り着くことができなかった。後で来てみると非常に憔悴していた。何年も遠出をしていなかったが、この映画の為に久しぶりに電車に乗って来たと話してくれた。その時は頭を殴られたような、目が覚める思いがした」と当時を振り返る。

それを受け監督は「自分自身もそのような時期があったので、苦しみはよくわかる。今回関わってくれた人たちは皆、世の中の役に立ちたいと尽くす気持ちで協力してくれた。苦しみから一歩踏み出してくれたことが感嘆であり、敬意を表したい」と語った。

また、本イベントでは監督へのサプライズゲストとして、出演者のミカさんが駆け付けてくれた。スカイプ越しに「なつかしー」と感慨深げに呟くミカさんに監督は「映画に出てくれて本当にありがとう。この状況で顔を見るのが不思議だね」と照れながらも満面の笑みで再会を喜んだ。

ミカさんは映画出演後、1年で抗うつ剤を飲むことを辞めたと監督に報告すると「素晴らしいね! 薬を辞めることが良いか悪いかではなく、ミカさんの気分が良いことが素晴らしいよ。ミカさんは愉しく、頭の良い女性だったから、もっとそうなっているんじゃない?」と喜んだ。ミカさんが「お伝えすることができて嬉しいです。元気な姿を」と言うと、監督も「赤ちゃんが産まれたよ」と写真を見せるなど、会場は和やかな空気に包まれ、ミカさんの姿に多くの人が勇気付けられた。

マイク・ミルズ監督は「落ち込んだ時は自分で気分を上げるのはなかなか難しいこと。映画の中にもあるように、自分の心に対しても、人との関わり方についても誠実・正直であることが必要ではないか。その中で親密さを見付けていくことが大切。落ち込んでいる時は、落ち込んでいると感じてはいけないと自分で思ってしまったり、社会からの声が聞こえてしまう感覚になるが、そう思わずに正直になることが大切ではないか」とまとめると、保田氏も「そう、それも僕が製作を通して感じたことです」と共感した。

「マイク・ミルズのうつの話」は10月19日(土)より渋谷アップリンクほか全国順次公開。


☆「マイク・ミルズのうつの話」作品紹介

「サムサッカー」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が「うつ」をテーマに日本で密着取材を敢行。“心の風邪”をこじらせた普通の人々の、壊れそうだけど愛おしい日々の暮らしを描いたドキュメンタリーだ。

今や日本人の15人に1人がかかっているともいわれる「うつ病」。しかし、2000年までは「うつ」という言葉は精神科周辺以外ではめったに聞かれなかった。なぜ、この短期間で「うつ」は爆発的に広まったのか?

90年代のユース・カルチャーを代表する映像作家マイク・ミルズは、その理由のひとつに製薬会社によって行われた「心の風邪をひいていませんか?」という広告キャンペーンがあると考え、その実態に迫るドキュメンタリーを作ろうと思い立つ。舞台は近年、急速にうつが常識化した日本。撮影対象となる条件はふたつ。1.抗うつ剤を飲んでいること。2.日常生活をありのままに撮らせてくれること。

本作でマイク・ミルズは、うつ患者たちの壮絶な日常を、独特の優しく明るい目線で捉えることで、この現代を象徴する病気に対する処方箋を調合するとともに、今の日本社会の問題点も鮮やかに描き出す。