米選抜カプルスがスピーチする横で下を向くニック・プライス、悲願達成はまたもならなかった(Photo by David CannonGetty Images)

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 雷雨と日没によるサスペンデッド続きだったプレジデンツカップは大会進行がすっかり不規則になってしまった。だが、米国選抜が通算18.5ポイントを獲得し、3ポイントの差をつけて世界選抜に勝利した結果は、過去の戦績を元に統計的に分析すれば、予想通りで規則的で妥当な結果だったということになるのかもしれない。
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 過去9回の大会の戦績は米国選抜7勝、世界選抜1勝、そして引き分けが1回。米国選抜が圧倒的な強さを誇ってきたからこそ、世界選抜は毎回、勝利することを悲願に掲げ、しかしその悲願はなかなか実らず、悲しい願いのままとなってきた。
 だからこそ、今大会で世界選抜を率いたキャプテンのニック・プライスは「何がなんでも勝ちたい」と闘志を燃やしていた。
 なぜ、世界選抜は弱いのか。なぜ、勝てないのか。その最大の理由はライダーカップの存在だ。米国人選手はライダーカップとプレジデンツカップを1年ごとに交互に戦う。つまり彼らはフォアボール、フォアサム、シングルスというフォーマットのチームマッチを毎年経験することができる。そうやって経験を積んだ選手が、やがてはキャプテンになる。今大会で米国選抜を率いたフレッド・カプルスは、選手としてもキャプテンとしても、まさにそうやって豊富な経験を身に付けてきた。
 一方、世界選抜はライダーカップとは無縁だ。単純に考えても、チームマッチの経験値は米国選抜の半分以下しかない。「経験では米国選抜が明らかに上回っている。が、私たち世界選抜は熱意で彼らを上回っている」。
 そうありたい――そんな願いを込めてプライスは闘志を燃やしいていた。
 しかし、熱意だけでは勝てない。経験豊富な米国選抜を負かすためには、熱意以外に何かが加わらなければ勝てない。「ショットは世界選抜が上。だから不慣れなはずのオルタネート(フォアサム)で成績がいい。パットは米国選抜が上。だから彼らはフォアボールで成績がいい」と分析したプライス。だが、この分析だと双方互角ということになり、世界選抜が勝つためには、まだ何かが足りない。
 その「何か」がチームワークやチームの結束力なのだとしたら、世界選抜が米国選抜を上回る日は、きっとまだまだ果てしなく遠いだろうと思わざるを得ない。なぜなら、米国選抜には最初から最後まで統一性がある。国籍は1つ、言語は英語のみ、掲げる国旗は星条旗だけ。それに対して今大会の世界選抜は6種類の国籍と国旗で成り立っていた。
 その中でコミュニケーションを取るのは、やっぱり大変だ。もちろん、プライスは必死になってカートを走らせたり、話しかけたりしていた。松山とは副キャプテンの丸山茂樹や通訳を介して意思疎通を図っていた。が、そんなとき米国選抜のカプルスは、スマホから各選手にメールやテキストメッセージを送り、「明日、何番手で出たい?」「ペアは同じでいいよね?」なんてやり取りを、いとも簡単に行なっていたのだ。そんな友達同士のようなコミュニケーション方法でコトが済んでしまうところ、機能してしまうところが、米国選抜のチームの特徴であり良さであり、アドバンテージなのである。
 それならば、せめてプライスが言った「熱意」だけは世界選抜が上回っていたのかどうか。実を言うと、それさえもわからない。たとえば第3、第4ラウンドは各チームとも2人ずつが休むことになるのだが、米メディアの大半は、米ツアーのプレーオフ最終戦のツアー選手権で疲労を口にしていたタイガー・ウッズ、あるいはシーズン内の出場スケジュールを思い切り削っていたフィル・ミケルソンあたりが休むのが妥当と見ていた。が、キャプテンのカプルスは「いや、彼らは休めと言っても絶対に休まない。故障を押してでも出たいと言う」。
 その言葉通り、かねてからの腰痛を抱えたままマッチに出続けたタイガーは個人戦の終盤に激しい痛みを発症し、顔を歪めるシーンもあった。それでも「我がチームのために勝利を挙げたことがうれしい」とタイガーは言った。タイガーが挙げたその勝利が米国選抜の優勝を決める勝利になった。
 プライスが言ったように技術面で両チームが互角だったとしても、熱意の面でどちらが上かは測れない。どちらの熱意も限りなく熱い。松山英樹も経験や国籍や言葉や年齢を抜きにして、唇を噛み締め、「悔しい」を連発。そして、最後にはこんな頼もしい言葉も口にした。「2年後に文句なしで自分が選ばれるようにならなきゃいけない」
 雨に降られ、表彰式を会見場で行なうことになったほど散々な展開ではあったけれど、最後には24名の選手たちの誰もが希望を抱き、未来を見据える締め括りになった。たぶんそれが、激しい雨がもたらした恵みだったのだろう。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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