街中に突然現れ一方的にプレイを強いる女王様が怖い!/[c]吉本興業株式会社

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前作『さや侍』(11)では時代劇に挑戦し、親子の絆を描いた松本人志監督。そんな前作とは趣を変えた監督第4作『R100』(公開中)は、松本が以前からやってみたかったという“SM”をテーマにした大人のためのファンタジーだ。“SM”という特異なジャンルが、“松本人志”というフィルターを通すと、一体どのような化学変化をもたらすのだろうか?

【写真を見る】松本監督も警察官役で登場し、主人公に辛辣な言葉を投げかける/[c]吉本興業株式会社

『R100』は、大森南朋扮する主人公の片山が、日常生活の中で楽しむというシステムのSMクラブ“ボンデージ”に入会してしまったがために、ボンデージ姿の女王様が職場や家庭にも訪れるという事態に巻き込まれる……という展開。クラブの設定こそユニークだが、SM要素は満載のようにも感じられる。だが、松本人志の笑いといえば、“ここまでやってもOKなのか?”という放送禁止というか倫理観をも問うようなギリギリ感。監督第1作『大日本人』(07)で“大アメリカ人”ことスーパージャスティスとそのファミリーが怪獣をいたぶる場面を長々と見せられたときのような気まずい雰囲気が、本作にも充満し、異質な緊張感を放っているのだ。

具体例を挙げると、佐藤江梨子扮する女王様が片山が食事をする寿司店に現れると、注文した寿司が彼の前に運ばれるや否や掌でそれを潰し、ぺったんこになった寿司を片山が食べるというシーン。これはかつて松本が発表したDVD「HITOSI MATUMOTO VISUALBUM」のコント「寿司」を基にしている。撮影に際し、佐藤とどのネタが一番面白くつぶれるかテストを重ねたというほどだから、単なる不条理ではない笑いへの真摯な姿勢というのが読み取れるだろう。

大地真央や寺島しのぶらが扮した女王様は、それぞれが得意なプレイで片山を攻めたてる。冒頭の喫茶店での冨永愛扮する女王様によるプレイのシーンなどは、年末のおなじみ企画「絶対に笑ってはいけない」シリーズのおしおきシーンを彷彿とさせるものの、女王様が神出鬼没に現れ、主人公をいたぶるさまはまるでホラー映画の殺人鬼のようにスリリングなムードも漂わせる。

また、警察に駆け込んだ片山の対応にあたるのが、松本扮する警察官で、片山の発言を受けつつも“変態の戯言”と一喝してしまうさまは、的を得ているものの悲しい気分にさせる。彼の笑いが好きな人なら無条件に受け入れられるだろうし、テレビでは放送できないような過激な笑いに飢えた人にこそ、松本人志ならではの計算されつくした笑いを存分に楽しんでほしい。【トライワークス】