携帯電話事国内最大手のNTTドコモが、ついにアップルのiPhoneを発売するなどスマートフォンをめぐる情勢が風雲急を告げている。これからどのような展開を見せるのか、大前研一氏が解説する。

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 いま世界スマホ戦争で何が起こっているかというと、サムスンが勝ったとかアップルが負けたとかいうレベルの話ではなく、かつての薄型テレビと同様に、想定をはるかに超えるスピードで低価格化が進んでいる。

 スマホ業界で日本勢はソニーモバイルコミュニケーションズ以外は総崩れ状態だが、負け方には二つあって、一つはOSやアプリなどの開発力での負け、もう一つはコスト競争力での負けである。そして今やOSやアプリよりもコストのほうが重要になり、端末の価格は中国勢、台湾勢、韓国勢からインド勢まで有象無象のメーカーが参入した結果、すでに100ドルを切る競争になっている。

 実際、アップルの新しいiPhone2機種のうち低価格の「5c」は99ドルだ(携帯電話事業者と2年契約の場合)。これまでアップルは価格を維持できたから利益が出ていたが、今後は低価格競争に巻き込まれて、ブランド力と利益率の低下に苦しむことになるだろう。ドコモとの提携は、iPhoneのコモディティ化をさらに加速する可能性もある。

 そうした中で、マイクロソフト(MS)はスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)の退任とノキアの買収を発表した。バルマー氏の後任には、元MS幹部だったためフィンランドでは“トロイの木馬”と批判されているノキアのスティーブン・エロップCEO(MSに復帰予定)やフォード・モーターのアラン・ムラーリーCEOが有力視されている。

 もしエロップ氏がMSの中で活躍できるポジションに就けば、私はかなり面白くなると思う。ノキアはスマホの出遅れで2012年の世界シェアがピーク時の半分の19%に落ち込み(米IDC調べ)、14年間君臨したトップの座をサムスンに奪われたが、そのような携帯電話事業の怖さをエロップ氏は思い知っているからだ。

 そういう人物がゲーム機のXboxとタブレット端末のSurface以外はソフト中心のMSに戻ってくるというのは、これから「脱パソコン」に大きく舵を切るであろう同社とノキアとの相乗効果が非常に大きいと思うのである。

※週刊ポスト2013年10月11日号