ジャーナリストに嫌味を言いながら、会場を笑いに巻き込む手腕をみせたトム・ハンクス/[c]JUNKO

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<※映画の結末に言及している箇所があります。ネタバレにご注意ください>

【写真を見る】ソマリアの海賊のキャプテンを演じたバーカッド・アブディ/[c]JUNKO

現地時間9月27日から10月13日まで開催されている第51回ニューヨーク映画祭が、トム・ハンクス主演最新作『キャプテン・フィリップス』(全米10月11日、日本11月29日公開)で幕を開け、ポール・グリーングラス監督、トム・ハンクス、バーカッド・アブディが記者会見に応じた。

本作は上映時間2時間12分のほぼ全シーンが船上で、半分以上が人質のフィリップス船長とソマリア人海賊4人だけ。それにもかかわらず、常に見る者に緊張感を与え続け、時間を感じさせなかったのはもちろん、ポール・グリーングラス監督の手腕とトムの演技力によるところが大きいだろう。特に感動の最終シーンで、極限の感情を見事に身体全体で表現しているトムの演技は、見る者の涙を誘うまさに圧巻の演技だが、「脚本には、ああいうシーンはなかった。でも人質が解放された時にまず最初にすることを海軍特殊部隊に聞いたら、『治療室に連れていく』って言われてあのシーンが出来上がったんだ。フィリップス船長を手当てしている看護師は、実際に海軍特殊部隊で働いている女性で、『このシーンを実際に映画に使いたい』といって撮影を始めたら、緊張してしまって、2テイクくらいうまくいかなかったんだ。俳優でない人たちもいたし、なかなか入れ込むのが大変だったと思う」と、撮影秘話を披露してくれた監督。

「確かに、最初はあまりテンションが上がらなかったんだ。あんなにエモーショナルにはなれなかったし、ひどいものだったよ。でもグリーングラス監督に、『大丈夫、きっとうまくいくよ』って言ったんだ。彼のやり方は、何テイクも撮っていいものを採用する方法だったから、僕もそれがいいと思って、4、5テイクはとったかな。1時間半くらいかかったんだけど、最後にああいう演技になったんだ」とトム。ベテランのトムといえども一筋縄ではいかなかったようだ。

そして、本作で忘れてはならないのが、海賊のキャプテン、ムーセを演じたバーカッド・アブディの存在だ。ソマリア生まれのバーカッドは、14歳の時に両親とアメリカに移住し、ミネソタの大学を卒業して映画の撮影もこなしているが、この大作で、見事に役を勝ち取り、映画デビューを飾った。

「僕は泳ぎ方も知らないんだけど、とにかくこの映画に飛び込んだんです(笑)。こんなに素晴らしい方々と仕事ができて、本当に光栄です」とベテラン俳優、監督を前に緊張気味のバーカッド。しかし、役作りについては、「特にモデルがいるわけではないんです。命がけの海賊がどんなものか、もちろんいろいろリサーチもしましたが、後はイマジネーションを働かせて演じました」という。バーカッドの海賊ぶりはまさに震撼もので、彼こそが同作にリアリティを与えたキーパーソンになったと言っても過言ではないだろう。

批評家たちからの評判もおおむね好評で、大きな手ごたえを掴んで、終始ご満悦の様子で会場を後にしたトムとグリーングラス監督。今から、来年の賞レースが楽しみだ。

なお、同作は、10月17日から開催される第26回東京国際映画祭のオープニング作品に選ばれており、ポール・グリーングラス監督と、4年ぶりとなるトム・ハンクスの来日が決定している。観客は、手に汗握る緊張のシーンの連続に覚悟して臨んでほしい。【取材・文/NY在住JUNKO】