女子テニスの東レ パン・パシフィック・オープン(東レPPO)決勝が28日、有明コロシアムで行なわれ、第7シードで世界11位のペトラ・クビトバ(チェコ)が第5シードで世界9位のアンゲリク・ケルバー(ドイツ)を6−2、0−6、6−3のフルセットの末に下し、初優勝を飾った。クビトバは今季ツアー2勝目で、ツアー通算11勝目を挙げた。

 レフティー同士の対決となった決勝戦は、リーチの長さをいかしたワイドショットやクロスコートの外へ逃げるスライスサーブなど、随所で左利きならではのプレイが見られ、興味深い一戦となった。プレミア大会レベルの決勝でレフティーが対戦したのは1993年パリ大会以来のことだという。

 試合は第1セット立ち上がりから得意なサービスとフォアハンドの強打で押してまくったクビトバが一気にゲームカウント3−0に。主導権を握ったクビトバは手を緩めずにベースライン際に深く強烈なショットを打ち込み続けた。だが第2セットに入ると気負いが災いしたのか、クビトバが凡ミスを連発。ケルバーは重要なポイントでリードを奪って優位に立ち、このセットを6ゲーム連取して制した。そして迎えたファイナルセット。開き直ったクビトバが、1球1球に集中して気合の叫びで自身を盛り上げるのに成功。積極的に打ってきたケルバーのきわどいショットを切り返し、要所では武器のサーブで着実にポイントに結びつけ、東レPPO16人目の女王に輝いた。

「相手の粘りがすごくて、マッチポイントを取るのが大変で手が震えた。このような大きな大会で大変なドローだったが、大会の歴史に残ることができて嬉しい」と語る23歳のクビトバは、2011年にウィンブルドン、WTAチャンピオンシップなど6タイトルに輝いて、同年10月に自己最高位の世界ランキング2位まで上がった経歴を持つ。本来の実力からしたら、トップ5に入っていてもおかしくない。だが、現在トップ10からも落ちているのは、心身ともに安定したプレイが継続できないからのようだ。

「私の試合はまだアップダウンが多くあるので、それがフルセットマッチが多くなる理由だと思う」と、クビトバ。確かに調子の波が激しい傾向はこの決勝戦でも見られた。また今大会では2回戦と準決勝、そして決勝と3試合がフルセットにもつれた。世界ランク1位の座に就くためには、何が必要なのか。クビトバは「まずは健康が一番。その上で、しっかり練習を積んで自信を持って常にコートに立てるようにしたい」と、意欲を語っていた。

 30回記念大会となった今年の東レPPO。この大会で優勝した選手はその後、世界ランク1位になると言われたこともあった。実際、コンピューターランキング制度が導入された75年以降、ナンバーワン選手は21人誕生しているが、そのうちの17人が東レPPOに出場しており、その中で優勝を飾っているのは、グラフ(ドイツ)、ナブラチロワ(アメリカ)、ヒンギス(スイス)、ダベンポート(アメリカ)、シャラポワ(ロシア)、サフィナ(ロシア)、ウォズニアッキ(デンマーク)の7人を数える。そこにクビトバの名が連なることに期待したい。

 すでに報じられているように、継続開催されることが発表された東レPPOだが、来年2014年からは大会カテゴリーが大きく変更される。この変更により、これまでの大会から様変わりする可能性が高くなった。

 2014年の東レPPOは大会グレードを現在の「プレミア5」から「プレミア700」と1ランク下がり、賞金総額も236万9000ドルから79万ドルに(日本円で約2億4000万円から8000万円に)減額される(トップ選手を呼ぶための増額も考えているという)。「プレミア5」の場合は、トップ10から7人が出場する決まりがあるが、「プレミア700」になるとトップ6から2人またはトップ10から3人が出場することになる。様々な方策と戦略を立てないと、これまでのように毎年5万人を超える観衆を集めた盛大なイベントであり続けるのは難しいだろう。

 この30年間、世界のトップ選手がこぞって出場してきた東レPPO。世界のトップ選手を間近で見られることが、日本の女子テニスファンの心をがっちりと掴んできた。一方ではそのホスピタリティにより、世界的選手たちを日本ファンにしてきた歴史でもあった。大会グレード等が変わっても、その幸せな構図が変わることはないはずだ。

辛仁夏●文text by Synn Yinha