「異次元の金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスの「3本の矢」はことごとく失敗する可能性が高い、と大前研一氏は指摘する。ここでは「機動的な財政出動」について大前氏が解説する。

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 第2の矢の「機動的な財政出動」は、これ以上は無理だ。もう日本に振れる袖はない。
 
 安倍内閣は「2015年度に赤字国債半減、2020年度までにプライマリーバランス黒字化」という歴代内閣の目標を踏襲すると表明している。すなわち「財政規律の維持」である。しかしそれを守るなら、財政出動する枠はなくなる。安倍首相は限られた予算の中で優先順位をつけて変えていくと言っているが、政治家にそんなことができたら、とっくに無駄遣いはなくなっているはずだ。予算は「票が取れるところ」につけ続けるに決まっている。

 財政規律を維持して国債暴落を回避するためには、消費税を予定通り2014年4月に8%、2015年10月に10%へと引き上げるしかない。それどころか近い将来、20%以上にアップする必要もあるだろう。内閣府の試算では税率を10%にしたとしても、2020年までにプライマリーバランス黒字化を達成することはできないとされている。

 ところが、安倍ブレーンの学者たちは「景気の腰折れを避ける」ため、毎年1%ずつ尺取虫のように引き上げるとか、景気が完全に回復するまで待ってから引き上げるなどと言い始めている。そんな姑息なことをやったら、その途端に世界の投資家が「日本は財政再建する気がない」と判断し、国債は投げ売りされるだろう。

 安倍政権は特例で現在1割となっている70〜74歳の医療費窓口負担を2割に戻すことを検討しているが、そんな小手先の微調整では、財政破綻は回避できない。

 補正予算などで捻出した10兆円以上の財政出動の効果も、今年の年末で切れる。その後は一気に反動がやってくるだろう。

※SAPIO2013年10月号