東北楽天初優勝。星野監督が一面だったのはトーチュウとデイリーの2紙でした。古巣ってありがたいですね。

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エース・田中将大が見事に最後を締め、東北楽天ゴールデンイーグルスが2013年パ・リーグのペナントを制した。

球団創設9年目での快挙。その要因のひとつには、間違いなく星野仙一監督の手腕があるだろう。これで中日、阪神、楽天と、(日本代表以外で)ユニホームを着たチームを全て優勝に導いたことになり、「名将」の一人であることは間違いない。

さて、星野監督の「名将」ぶりを表す表現として、ネット界隈でよく使われるワードに「わしが育てた」というものがある。一度は目にした人も多いハズだ。
元々は、2006年4月に開かれた懇親パーティーの目玉企画「星野SDと田淵解説トークショー」における、「大半の中日の選手は私が育てたんだもの、力のある選手ばかりだよ」という星野氏自身の発言が由来とされている。

基本的にこの言葉、使用されるのは少々揶揄の意味合いを込めての場合が多い。だが、今回の優勝を機に、改めてその真偽を確かめてみてもいいのではないだろうか。
そこで今回は、“育てる”という意味合いから「新人王」、そして投手出身監督として「最多勝」の2点で星野監督の「育成力」を検証し、東北楽天の優勝の要因を探ってみたい。
(※尚、“育てる”という側面から、自由獲得時代ではなく、1966年のドラフト制度施行以降を対象として計測した)

《新人王は、わしが育てた!》
ドラフト制度以降、歴代の監督の中で「新人王」をもっとも多く輩出した人物は誰だろうか?
12年シーズン終了時点でのランキングを作成してみた。

1位:上田利治/6人……山口高志、佐藤義則、藤田浩雅、熊野輝光、酒井勉、金子誠
2位:野村克也/5人……佐藤道郎、藤田学、伊藤智仁、赤星憲広、田中将大
2位:原 辰徳/5人……木佐貫洋、山口鉄也、松本哲也、長野久義、澤村拓一
4位:星野仙一/4人……立浪和義、与田剛、森田幸一、川上憲伸

去年までの結果では4位の星野監督だが、今年、楽天の則本昂大投手が新人王の最右翼と言われており、今季終了後に歴代2位の座に並ぶ可能性は高い。
つまり、「新人王」を数多く輩出した、という実績では、まさに「わしが育てた」は正しかったと言えるのだ。
また、新人王を受賞してはいないが、監督に初めて就任した1987年にルーキーの近藤真一を先発に抜擢し、プロ野球史上初の快挙となる初登板・初先発ノーヒットノーランを達成させた実績も外せない。
新人王が生まれるかどうかは、その時のチーム事情や、そもそものドラフトでのクジ運による部分も大きいが、それでも、思い切った新人の抜擢と、1度や2度の失敗でも見限ることなく我慢して使い続けることができる忍耐力の賜物だ。これこそが星野監督の「育成力」と言える。


《最多勝は、わしが育てた!》
個人的な思い出で恐縮だが、星野監督とは一度だけ、エレベーターという個室の中で蜂会わせしたことがある(星野監督、監督の付き人、そして私の3人)
2008年の6月。北京五輪直前の星野監督は真っ黒に日焼けし、その黒い顔だからこそ目立つ白い眼でお付きの人を睨みつけ、「とにかく投手なんだよ、投手」とほとんど説教のような会話をしていたのが印象的だった。

この言葉を借りるまでもなく、ペナントレースを勝ち取る上でとにかく重要なのは投手力であり、「エース」の存在だ。
自らも現役時代、中日のエースとして活躍した星野氏だが、実は最多勝の経験はなし(※沢村賞と最多セーブ王が1度ずつ)。
それ故の憧憬なのか、星野監督は過去、最も多くの最多勝投手を輩出した監督である、というのは意外に知られていない事実だ。
16年間の監督生活の中で、実に8人(計10回)もの投手が、最多勝利に輝いている(小松辰雄/小野和幸/西本聖/山本昌広※3回/今中慎二/バンチ/井川慶/田中将大)。
これは、歴代2位である上田利治氏の5人(計7回)を大きく引き離してのダントツの1位。
そして今年、田中将大投手が間違いなく最多勝を獲得し、これで11回目の「最多勝投手」輩出となる。

また、エースの中でも特に価値があるとされる「20勝投手」を、過去に3人(89年・西本聖、03年・井川慶、そして今年の田中将大)も輩出している点にも注目したい。
投手の分業制が確立し、「リリーフでの勝利」という上積みが難しくなった80年代以降でみると(※「最優秀救援投手」の成立がセ・76年、パ・77年)、3人もの20勝投手を擁した、というのは星野監督ただ一人である。

もちろん、勝ち星を重ねることができたのは投手個人の力量や努力、そして投手コーチのウエイトが占める部分が大きく、単に選手やスタッフに恵まれただけ、という表現もできるだろう。
だが、そうした「人材運」もまた、監督としての力量のひとつ。何よりも、エースの自覚を促し、1年間信頼して使い続け、打線の援護を引き出すことに成功しなければ、とても20もの勝ち星を重ねることはできない。これもまた、星野監督の「育成力」のなせる技だ。


今回は、「新人王」と「最多勝」の2点から星野監督の手腕と功績を振り返ってみた。
だが、星野監督が「名将」になり切れていないと感じてしまうのもまた事実だ。
それはやはり、日本シリーズを一度も制したことがないから。
絶対的エース・田中将大を擁し、今度こそ、日本一の頂きに輝くことができるのか。

クライマックスシリーズは、10月12日から。そして東北楽天の登場は10月17日からとなる。

(オグマナオト)