高橋洋一 1955年、東京生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。近書に『世界で一番わかりやすいニッポンの論点』(ダイヤモンド社)。

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10月1日に表明する見通しとなった消費税率の引き上げ。政府は消費税率の引き上げに備えて、新たな経済対策を検討するなど、着々と地固めをしている。施策自体は減税と補正予算などの財政出動を合わせて、5兆円を上回るという予測もある。こうした施策を打ってまで消費増税を押し進める理由はどこにあるのか。ZAi編集部は、消費増税に到った経緯を振り返りながら、『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った世界一わかりやすいニッポンの論点10』の著者であり、アベノミクスブレーンの高橋洋一さんに消費増税の今後の流れと展望についてインタビューした。

ギリシャ問題で危機感を煽り、消費増税を強引に決定

――そもそも、なぜ消費税を5%から段階的に10%に引き上げることになったのはなぜか、もう1度経緯を振り返ってみたいのですが

 ちょうど1年前、民主党政権交代時のマニフェストにも書かれていなかったことが、当時の野田首相のもと強引に決められた。それが消費増税だ。

 そもそもは、その前の菅首相が当時のギリシャ危機を例に、増税しないと年金や給料がカットされるとさんざん危機感をあおって増税を言い出したのだ。

 当時、日本の借金は、対国内総生産(GDP)比で200%を上回っている。債務危機に見舞われたギリシャでも160%程度だから大変だ、といったことが議論された。

 しかしギリシャの問題は国民数に対して公務員の数があまりにも多いことにあった。年金の拠出に比べて、給付があまりにも大きかったために財政破たん状態に追い込まれたのだ。同じように日本も危機に直面しており、増税しなければ、財政破たんをすると言うのは、あまりにも論理的ではない議論だ。

 日本の場合は、長引くデフレ状態に加え、歴史的な円高により、税収が落ち込んだ。民主党政権時代に失ったGDPはピーク時と比較して最大で52兆円だ。GDPを引き上げる政策を打ち出さず、また為替レートを適正な水準で安定化させることをせず、安易に消費増税を言い出したのが、ことの発端なのだ。逆に言えば、名目GDPを引き上げ、円高を是正し、デフレを解消すれば、自ずと税収が増える。消費増税をするまでもないのだ。

 この好例は、2001年からの小泉政権時代を見ればいい。消費増税を封印しつつ歳出の伸びを抑え、同時に経済成長を目指したから、基礎的財政収支赤字は28兆円から6兆円まで改善した。これは消費税率8%分に相当する。

低めの成長率に固執する財務省

――消費増税をする明確な理由がないのに、増税に向かって突き進んでいる理由は何ですか?

 名目GDP成長率が5%程度になると、プライマリー収支が改善し、財政再建ができる。9月9日に発表された4−6月期の速報値では3.8%。先進国では4〜5%が当たり前なわけだから、まだまだ成長率を上げなければならないはずだ。

 しかし、財務省は「景気回復の兆し」とし、これ以上の成長を明確には打ち出していない。それは、成長すると増税の根拠がなくなるからだ。財務省は低めの成長率に固執していると言わざるをえない。

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