都心のタワーマンションに住み、高収入なイケてる旦那「イケダン」と、名門幼稚園に通うための「お受験」に励む子どもを支えつつ、セレブママとして華やかな生活を送る。

そんな30代の女性たちが、読者モデルとして登場する人気ファッション誌が「VERY」です。かつてお嬢様大学に通い、「JJ」を愛読していたセレブ大学生が、結婚後の"参考書"として手にするこの雑誌は、美人ママ流の華やかなライフスタイルを提案しています。

一見誰もがうらやむようなセレブライフ。その裏で繰り広げられる、タワマンとその周辺に住む家族との収入格差や、ママ友グループの縄張り争い、ささやかれるお受験の噂...。セレブママたちのエグい本音や悲哀、虚栄心を描いた桐野夏生さんの小説『ハピネス』は、当の「VERY」上で、まるで読者へのカウンターパンチのごとく連載されたことで、話題となりました。

物語の中心となるのは、江東区の埋め立て地に建つベイタワーズマンション(BT)。タワーマンション内でも、格差があるのが特徴。ベイウエスト・タワー(BWT)とベイイースト・タワー(BET)の2棟から成るBTには、下層か高層か、分譲か賃貸かなどで、見えないヒエラルキーが存在します。

BTとその周辺で暮らすママ友グループは、お互いを「花奈ちゃんママ」などと子どもの名前で呼び合っています。ママ友グループの一員でありながらも、ハイセンスなママたちに引け目を感じつつ生活している主人公・有紗は、ママ友グループのリーダー「いぶママ」について、こう語ります。

「いぶママの自信と落ち着きは、BTで最も価値の高い部屋に住んでいることによって、培われたものかもしれない、と有紗は思う。だって、駅前の普通のマンションに住んでいる美雨ママや、BETの方の賃貸の自分がママ友のリーダーだったら、ママたちがついて来てくれるかどうかは怪しい」(本文より抜粋)

虚栄心とコンプレックスのはざまで展開していくストーリーは、次第に主人公や、ママたちが抱える「それぞれの秘密」をあぶり出していきます。彼女たちの見栄が、すべてはがされたときに残るものは?衝撃のラストは一読の価値アリです。



『ハピネス』
 著者:桐野 夏生
 出版社:光文社
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