新興国 VS. 先進国 QE3を非難した新興国が、QE3縮小に恐怖する…
QE3で景気が回復した先進国、景気が低迷する新興国…格差が拡大


いきなりですが、図1をご覧ください。5月以降の各国の株価指数の推移です。5月下旬に米国FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長がQE3(量的緩和第3弾)の早期縮小について言及したのをきっかけに、各国の株価は一斉に下落しましたが、その後の展開は二極化しました。7月中旬現在、5月の水準を回復したのは先進国で、新興国の多くは低調です。その分かれ目となったのは、7月5日の米国雇用統計でした。

バーナンキ発言以降、米国経済が良好だと、「緩和策の縮小が早く始まる」と警戒され、株式市場は下落してきたのですが、大きく改善した雇用統計を受けた米国株は上昇しました。「いきなり緩和策が終わるわけじゃないし、重要なのは縮小の規模やペース。そもそも、経済が回復しているからこそ縮小するわけだし」と。しかし、逆に新興国では、「緩和策縮小で資金が引き揚げられるのでは」と警戒感が強まりました。こうした新興国からの緩和マネー流出問題は、7月下旬に開かれたG20(20カ国・地域)財務相・中銀総裁会議でも議題になりました。

リーマン・ショック以降、先進国は積極的に金融緩和を行なってきました。これまではあふれたマネーが新興国に大量流入し、インフレやバブルの要因になっていると、新興国側からは非難の対象でした。ところが、今になって「資金を引き揚げられては困る」と新興国の言い分は逆転したわけです。

その背景には、過去の米国量的緩和(QE1、QE2)と違い、QE3では先進国と新興国の景況感の改善度合いに違いが出てきたことがあります。新興国株は今後も米国の金融政策の動向に左右されそうですが、根本的な問題はマネーフローの面だけでなく、新興国の高成長傾向が転換期を迎えつつあることです。

たとえば、中国はある程度の景気減速や混乱を受け入れてでも、安定成長に向けた経済構造改革を実行しようとしています。各国が抱える課題に取り組み、次の成長段階に踏み込めるかどうかで、新興国の選別が進みそうです。




土信田雅之(Doshida Masayuki)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト

新光証券などを経て、2011年10 月より現職。ネット証券随一の中国マニアでテクニカルアナリスト。歴史も大好きで、お城巡りと古地図収集が趣味。




この記事は「WEBネットマネー2013年10月号」に掲載されたものです。