Cdsc_0016
拙blogでは8月5日付ファイターズが崩れていく…。武田勝5回1/3、79球交代の波紋!?で、今年のファイターズの成績が一過性の成績不振ではなく、北海道に移転後、脈々と築き上げてきたものが壊れていくのではないかと危惧したが、ますますその感が強くなってきた。

・7月24日の登板を最後に実戦から離れていた中村勝が9月8日に突然一軍入り。
・左手第5中手骨の亀裂骨折で離脱している中田翔に関して「(再度)折れてもいいから、オレによこせと(トレーナー陣へ)言っている」
イースタンで三回途中で9失点の斎藤祐樹に栗山監督は今季中の1軍登板について「すぐにでもという可能性がある」と示唆。

おかしい。今年のファイターズはおかしいのだが、最近のファイターズは特におかしい。


(※ 写真はイメージです。)



おかしい。この三つの事例に共通することとして、一軍と二軍の連携がうまくいってないのではという疑問が沸く。

中村勝が実戦のマウンドから遠ざかっていた理由を敗戦処理。は正確には確認していないが、何らかの異常があったのだろう。ようやく復帰登板という9月初旬のイースタンのマリーンズ戦が雨天中止で投げられなかったという不運はあったようだが、9月8日に突然一軍入り。リリーフでの試運転もなく、16日のホークス戦に先発したが、5イニングを投げて自責点2で敗戦投手になると翌日には登録を抹消された。

ボビー・ケッペルが不調で登録を抹消されていたので14日から16日のホークス戦に先発ローテーションの谷間が出来ることはわかっていたが、この谷間を埋める先発要員ならば登板当日に一軍登録するのが一般的だ。それが決まっているのなら、登板日の前に中途半端にリリーフ登板など無いように一軍登録を控え、投手数が足りないのなら別のリリーフ要員を登録しておくのが一般的だ。しかしファイターズは一軍登録してファームでの復帰登板の機会を奪い、一軍でいきなりの先発復帰。実績のある投手なら調整登板なしの登板も理解出来るが、入団四年目で今季は未勝利の投手にそこまでの信頼を置いていないだろう。では何故一軍に連れてきたか?ファームでの調整に任せられなかったのではないか?

もしそうだとすると、故障後の調整でファームと一緒に鎌ヶ谷にいる中田翔に関して栗山英樹監督が「(再度)折れてもいいから、オレによこせと(トレーナー陣へ)言っている」と言ったのも、二軍で大量失点の斎藤佑樹に関し“1軍登板について「すぐにでもという可能性がある」と示唆”したのも理由が推測できる。栗山監督はファームの指導、育成、調整を信用出来ないのだろう。気になる選手は全部自分の目の行き届くところに置かないと気が済まないのだろう。

ファイターズは一軍が北海道でファームが千葉県の鎌ヶ谷にいて離れているという物理的な事情もあるが、現場のトップである栗山監督であっても一、二軍の人員入れ替えに際してファームからの昇格人選には希望は出せても決定権はないという。ファームの監督や首脳陣の報告を元にフロントに決定権を持つ人物がいて、栗山監督とファーム首脳陣の意向を擦り合わせるという。監督には現場の最高責任者に徹底してもらうというアメリカ大リーグのフィールドマネージャーに近いそうだ。

補強より育成にチーム強化の比重を置くファイターズ球団にとって、ファームの選手の成長度合いを客観視することは重要。それだけに一軍の一大事にファームから誰を挙げるかに関しては一軍の監督に決定権を持たせないのだろう。


ただ、そのファームが今年はとんでもない状態で、既にイースタン・リーグの年間最多敗戦記録を更新し、今日(21日)も敗れて30勝70敗5引き分け。勝率がちょうど.300で文句なしの最下位独走中だ。もちろんファームは勝敗だけが全てではないという見方もあるだろうが、これは常軌を逸している。そして後述するが人材供給源としても充分な機能を果たしていない。栗山監督の一連の言動が仮に越権行為だとしても、居ても立ってもいられないという心境は理解出来る。

しかし、それは上述したような役割分担が明確にされているのであれば、仮にこのような惨状であっても栗山監督はやってはいけないのである。補強より育成に比重を置く球団にとって、この境界を守ることは生命線であると敗戦処理。は思うからだ。今のファイターズは一軍もファームもこのままではいけないとは思うが、それを互いの領域を超えて手を出すと、良い方に転ぶとは思えないのである。


ライオンズに1対5で敗れ、リーグ優勝の可能性が数字上完全に消えた19日のスターティングメンバーでは二塁手が本職の西川遥輝がレフトを守り、捕手が本職の近藤健介がライトを守った。何でこんな事になったのか?


中田が離脱した時、直後に一軍に上がったのは同じ右打ちの外野手、二年目の石川慎吾だった。石川が大抜擢に答えられず力不足を露呈したのは仕方ないにしても(佐藤賢治の再登録が不可能だったという事情があったにせよ)、捕手や内野手を付け焼き刃に外野に回すしかないというのが、育成を屋台骨にしている球団の実態だと思うと非常に寂しい。もちろん、ファームに主砲中田の穴を埋める人材がいるなどとは期待しない。だが外野手が離脱したのなら、力は落ちても外野手を補充。スタメンには一軍の控え選手が入るのが普通だろう。

なにより、ファイターズというチームは北海道移転後の2006年の優勝以後は投手を含めた守備力の高さをチームカラーとし、それによって失点を最小限に防ぐという前提でその失点を上回る得点を如何にして挙げるかで勝利を勝ち取ってきた球団だ。トレイ・ヒルマン、梨田昌孝、そして今の栗山監督と三代の監督がそれぞれチームを優勝に導いているが、どの監督も鉄壁の守りをベースにした野球でリーグを制してきた。それが、主砲とはいえ一人の選手の離脱で大きな変化を強いられ、守備にはある程度目をつぶらなければならない選手が二人もスタメンに名を連ねなければならないのだ。

もちろん、ここ何年かの成功事例の法則が将来的にずっと通じる成功の法則であるとは限らない。他球団の向上も日進月歩だ。そこまで考えて、これまでの成功法則を一度ぶち壊してリセットして新しいものを作るというのなら、それも一つの選択肢だ。だが現時点で栗山監督がそこまでの決意を持って自覚的に創造的破壊をしていると判断する根拠は無い。

栗山監督は当初は今季までの二年契約だったが、今季が始まる前に一年間の契約延長が確認され、低迷中の先日も来季続投が確認されたとの報道が出た。来季に向けて、何かを変えなければならないと危機感を持つのはわかるが…。

数字上完全に優勝の可能性が無くなり、クライマックスシリーズ進出もかなり厳しくなった現実の元、ともすれば消化試合モードになりそうなチームに喝を入れるために、最後の悪あがきを栗山監督がしているというならまだその方がいい。「昨年優勝したのだから、今年は多少順位が下がっても仕方ないよ」というのはファンの気休めであって、現場がそう思ってもらっては困る。山田正雄ゼネラルマネージャーは糸井嘉男らのトレードが成立した時に「中長期的に見て…」と語っていたから、今季の成績下降はある程度は織り込み済みなのかもしれない。だが、一度歯車が狂うと、狂った歯車に歯止めをかけるのは容易な事では無いと思う。


最後に上述の8月5日付けエントリーで強調したかった一節を再掲載する。


日本一から十年と経つ前に最下位が指定席になった球団もある。去年勝ったから今年はいいやというものでもないだろう。それより何より、2006年のリーグ優勝から、脈々と連なってきたファイターズの野球が崩れていくように思えて、それが心配なのだ。連なりと繋がりは一度途絶えたら、再びそれを為すのは容易ではない。



昨年はリーグ優勝を果たしたものの観客動員は前年割れとなり、それに今季は成績不振が重なって昨年に次ぐ減少傾向だという。敗戦処理。は二十五年間も優勝から遠ざかっても付き合っているが、多くの北海道のファンがそうとは限らないだろう。

本来ならこうした内容の文章を書く以上、「じゃあ、どうすればいいのか?」という代替案を書くのが筋だろうが、残念ながらまだそれが見えてこない。読んで不快に思われる方がいらっしゃったら申し訳ない。だが、この成績低迷が一過性のものとは考えにくく、黙っていられない…。


もちろん、これらの心配がすべて杞憂に終わることを祈っているが…。



.S.
本日はジャイアンツの二年連続セ・リーグ優勝決定関連のエントリーをアップする予定でしたが、都合により全面的に内容を変更しました。