インラック政権で政治は安定状態。 国民所得の底上げで内需は拡大傾向
コメの買い取り策や自動車購入者への補助金など、国民に受けのいい政策で高支持率を維持するタイのインラック政権。 消費の拡大と巨額インフラ投資によって、タイ経済は当面上向きそうだが、タイ株にもプラス材料となるのか。


秋口に一時的な調整も 懸念されるが、年末に向けて株価は再上昇する
5月20日にタイのSET指数が年初来高値の1643ポイントをつけて以来、約1カ月にわたって大幅調整が続いたタイ株相場。

「日本株と同様に、米国の金融緩和縮小懸念によって外国人投資家が資金を一斉に引き揚げたことが調整の要因です」と語るのは、シンガポール金融大手フィリップキャピタルの証券部門、フィリップ証券タイ(タイランド)調査部長のサシコーン・シャロエンスワンさん。

サシコーンさんは、タイ株のアナリストとして現地発の最新情報を世界中に発信しており、タイ経済の動向にも非常に詳しい。
「5月以降の下げは、あくまでも外的要因によるもので、タイ経済そのものは堅調です。タイ株相場が6月下旬に底を打ったのは、米国発の不安が拭い去られて、タイ経済本来の強さに再び関心が集中したからでしょう」という。



タイ経済の強さを支えているのはインラック首相による積極的な景気テコ入れ策だ。
インラック政権はタイの経済成長を促すため、最低賃金の引き上げや家計負債の負担緩和など、個人消費の拡大に直結するような政策を次々に打ち出している。「農家支援策の一環として、コメを市場価格よりも高値で買い取る政策や、自動車を初めて購入する人に補助金を提供する制度など、手厚い支援策を数多く実施しています。それらは、個人消費の拡大に結びついているだけでなく、インラック政権の高支持率を維持するうえでも大きな効果を発揮しています」

ただし、秋口にかけてはタイ株相場が再び一時的な調整局面に入ることも想定されるとサシコーンさんは語る。
というのも8月に始まったタイの国会で、野党や反政府団体などが猛反発している法案が審議されているからだ。「問題となっているのは、有罪判決を受けて国外逃亡中のタクシン元首相を復帰させるための恩赦法案と憲法改正案、そして総額2兆バーツ(約6・3兆円)に上るインフラ開発計画への融資法案です。タクシン元首相はインラック首相の実兄ですから、なんとしても法案を通すだろうと思いますが、そのため、反タクシン勢力の反発は避けられそうもありません。反政府デモなどが繰り広げられた場合、外国人投資家が嫌気して株価に一時的な悪影響を及ぼすことは十分考えられます」

また、インフラ開発計画への融資法案は、その金額があまりにも大規模であることから、財政への悪影響を不安視する声が強いという。



もっとも、「インラック政権は圧倒的な支持率を獲得しているので、反政府デモの勢いはそれほど長くは続かないはず。インフラ開発が財政に及ぼす悪影響は確かに懸念されますが、タイの経済成長を底上げする効果も期待できるので、株式相場にとってはむしろポジティブな材料です。SET指数は年末までに1600ポイント台を回復することでしょう」とサシコーンさん。セクター別では、インラック政権によるテコ入れ策の恩恵を受ける消費関連、大型インフラ開発計画で受注が拡大しそうなセメント会社や融資案件が増える銀行・金融などが有望だという。具体的な注目銘柄として、サシコーンさんは下段の3銘柄を挙げた。

サイアム・セメント(建設)

セメント・建材、石油化学、紙・梱包、流通の5つの中核事業を統括する持ち株会社。石油化学事業以外は、すべての分野で市場シェア1位を誇っている。

今年第1四半期は、純利益が前年同期比%増と大幅増益を達成。セメント・建材事業は、政府の大型プロジェクトと住宅用不動産の活況に支えられて業績を大きく伸ばした。1〜5月のセメント需要は前年同期比%増と高い伸びを示しており、今後も堅調な増加が見込まれる。タイ政府による大規模なインフラ開発計画の推進は追い風だ。