「異次元の金融緩和」「機動的な財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」というアベノミクスの「3本の矢」はことごとく失敗する可能性が高い、と大前研一氏は指摘する。ここでは「異次元の金融緩和」について大前氏が解説する。

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 第1の矢の「異次元の金融緩和」は、出口戦略が見えない上に、日本銀行の内部崩壊リスクを高めている。日銀は4月に毎月7兆円程度の長期国債を市場から購入して金利を押し下げる方針を決めた。
 
 それ以降、金融機関はせっせと国債を日銀に売りまくっている。日銀が国債買い入れオペの実施を通知すると、入札ではいつも買い入れ総額をかなり上回る応募があるのだ。その結果、3メガバンクの6月末の国債保有残高は3月末に比べて、三井住友フィナンシャルグループが9.2兆円、三菱UFJフィナンシャル・グループが8.4兆円、みずほフィナンシャルグループが6.2兆円も減少している。バブル崩壊後、政府の求めに応じて金融機関が仕方なく背負ってきた国債という重い荷物を、大喜びで次々と日銀に売りつけているのだ。
 
 だが、かねて繰り返し指摘してきたように、日本国債はGDP(国内総生産)の2倍も発行されている、ある意味世界で最もリスクの高い国債だ。これからいっそう少子化・高齢化が進む日本にとって、返せるはずのない莫大な借金である。

 通常、中央銀行が国債を買い入れる場合は残存期間が5年以内のものを買う。短期間に償還されていくので、保有リスクが低いからだ。ところが、いま日銀はあらゆる残存期間の国債を買い入れている。今後予想される国債暴落のリスクを日銀がどんどん背負い始めているわけである。ここからは、国債暴落(=日銀の破綻)が先か、経済が劇的に回復して現在の「異次元緩和」を終えられるのが先かというチキンゲームになるが、後者のようにハッピーエンドを迎えられる可能性は非常に低い。

※SAPIO2013年10月号