IPOにも使えるテクニカル。黒岩流「窓・壁・軸理論」とは?
上場したばかりの銘柄にはテクニカル分析は通用しないといわれている。しかし、「窓・壁・軸理論」を使えば、株価の動きが読めるという。


投の心を資家理巧みに組み込んだ「窓・壁・軸理論」

人間の顔に表情があるように、チャートにも表情がある。喜んでいる顔、怒り顔、哀しい顔、楽しい顔――そんな「喜怒哀楽」がわかれば、相場で儲けるのは簡単だ。喜んでいる顔のときに買い、哀しい顔で売ればいいからだ。

「窓・壁・軸理論」は、そんな表情を捉えるのに最適なテクニカル分析である。一般的なテクニカル分析にはない投資家心理が、巧みに組み込まれているのだ。

「窓・壁・軸理論」の基本的な考え方は、チャートが「窓理論」にマッチしているかどうか――それを判断するところから始まる。窓理論は下の図のような「法則1」「法則2」などがある。法則1とは、株価が「窓」を空けて上昇したときに無条件で買いにするというもの。これは「軸」(株価の中長期的な方向性)が上向きに傾いた可能性が高いからだ。

逆に、株価が窓を空けて下落したときには無条件に売りとする。これは軸が下向きに傾いた可能性が高いからだ。

そして法則2とは、株価が下方の窓に到達したときに買い、上方の窓に到達したときに売りにするというものである。窓には株価を引き寄せる力があり、窓埋めによってその力が減退するからである。引き寄せる力がなくなれば、株価は推進力を失うことになる。だから、窓埋め達成で相場が反転することが多いのである。



一方、「窓理論」のほかに「壁理論」がある。株価は壁に近づくと、反対方向に動きやすくなるというものだ。「壁」には2種類ある。「テクニカルの壁」と「ファンダメンタルズの壁」である。テクニカルの壁は、「需給による壁」であり、一時的に出現するもの。値幅調整や日柄調整によって消滅し、株価はいずれ、もと進んでいた方向に動き出す。逆に、ファンダメタンルズの壁は「割高もしくは割安の壁」である。株価が一定水準に近づくと、出来高の増加がなくても、勝手に株価が反転してしまう。「これ以上、上昇できない」もしくは「下落できない」という限界値を示すものである。上昇銘柄を探すには、この下方向にファンダメタンルズの壁が位置している銘柄を選べばよい。



では、実際にはどのような考え方をするのか、IPO銘柄で具体的に説明したい。まずはオイシックスの日足チャートをご覧いただきたい。この銘柄は上場から6営業日目に窓を空けて下落した。これは「窓理論」の法則1の売りサインである。この時点でこの銘柄は「軸下向き」の可能性が高くなった。軸は株価の中長期的な方向性を示すと先ほど説明した。上向きならば上昇しやすく、下向きならば下落しやすいということだ。したがって、窓空け下落となったからには、その後の株価は安値を更新し、下値模索の動きを続けなければならない。

しかし、実際の株価は底堅く推移し、その後しばらくたって上昇に転じたのだ。どうやら安値近辺にファンダメンタルズの壁(割安の壁)があるのではないか、と推測できるのだ。下方向にファンダメンタルズの壁があるということは、軸が上向きに傾いているということ。先ほどの「軸下向き」が誤りである可能性が高く、軸はすでに上向きに転換している可能性が高いということになる。そして「窓理論」で売りサインが出た水準を突破したことで、「軸上向き」がほぼ確定する。ここで急騰を予感するのである。

もうひとつの例はオルトプラス。この銘柄は上場14営業日目に売りサインが出現した。チャートは「もっと下がる」という哀しい顔をしていたのだ。しかし、その5営業日後には窓を空けて上昇。窓を空けて上昇するということは、軸が上向きの可能性が高いということ。急に「楽しい顔」に変化したのだ。だから、この時点で下方向にファンダメンタルズの壁(割安の壁)が存在していることを意識しなければならない。そして極めつけなのがその後の上昇で、上場直後の出来高増加で出現したテクニカルの壁を容易に突破したことである。ここで「軸は完全に上向きである」と断言できるのだ。そしてその後の急騰へとつながった。

このようにIPO銘柄といえども、しょせん、投資家心理を反映した株価の集合体である。何かしらのヒントは隠されており、上場日数が少なくてもそれなりの判断はできるということだ。

今回は主に買い時に関して説明したが、基本的な考え方は売り時も変わらない。軸が下向きに変化したタイミングを見計らって売ればいいのであり、やや事後的にはなってしまうが、それほど悪い結果にはならないはずだ。

チャートの表情(喜怒哀楽)を見て、売買を判断する――これは不変の法則なのである。




黒岩泰
黒岩アセットマネジメント代表

大手証券会社、金融情報会社などを経て、独立。自らの理論を提唱するテクニカルアナリスト。『夕刊フジ』と『ネットマネー』の共同企画「株−1グランプリ」の7月大会では、歴代最高パフォーマンスとなる5倍高を達成。



この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。