前回、ドバイをはじめとする中東産油国のバブルについて書いた。

[参考記事]
●ほとんど問題にされない巨大な経済格差、"法外な幸運"を享受する産油国の実態

 ところで、石油の価格はどのように決まるのだろうか?

 石油価格の高騰は先物市場への投機マネーの流入だとしても、その仮装をはげば「商品」としての需要と供給の実体が現われてくるはずだ。

 原油価格の受給要因については、水野和夫+川島博之編著『世界史の中の資本主義』(東洋経済新報社)所収の「シェール革命が進むも原油価格の大暴落は起こらない」で、昭和シェル石油チーフエコノミストの角和昌浩氏が簡潔に解説しているのでここで紹介しておきたい。

原油の生産コストはいくら?

 まず、油田を探し、地中から原油を掘り出して運搬可能な状態に製品化するには相応のコストがかかる。この費用は、探鉱・開発コストと、生産・操業コストに分けられる。

 IEA(国際エネルギー機関)は『2005年世界エネルギー見通し』で、油井ごとの総生産コストを推計している。それによれば世界の原油の探鉱・開発コストは平均して1バレル当たり4.8ドル、生産・操業コストは7.7ドルで、原油の総生産コストは平均12.5ドルとなる。

 それに対して中東の主要産油国の原油生産コストはきわめて低く、サウジアラビアが3ドル(開発コスト1.5ドル+操業コスト1.5ドル)で、それ以外の中東諸国の生産コストも5ドル以下だ。これらの国の油田は地中から汲み上げた原油をそのままパイプラインに流すだけでよく、この圧倒的なコストの安さが中東の富の源泉であることは前回述べた。

 では、それ以外の油井のコストはどうなっているのだろうか?

 同じくIEAの推計では、アメリカやヨーロッパの沖合海底油田(大深水海底油田)は操業コストだけで10ドルを上回り、探鉱・開発コストを加えた総コストは13〜15ドルになる。

 カナダなどで採掘されているオイルサンドは原油を含んだ砂岩で、そのままではコールタールのような状態なのでパイプラインで輸送できない。そのため総生産コストはさらに高くなり、民間会社の年次報告書(2005年)から概算すると、生産・操業コストが12.34ドル、簡易精製して輸送可能な合成原油にするのに8.01ドル、これに管理費・研究開発費を含めたトータルの生産コストは21.74ドルになる。またオイルサンドの生産自体にかなりのエネルギーが必要で、エネルギー価格の上昇が生産コストを押し上げるという悪循環に陥りやすい(これは後述のシェールガス/オイルでも同じだ)。

 こうした原油の生産コストから、石油開発が事業採算に乗る価格が決まる。それは2005年時点では、在来型の油田開発が1バレルあたり25ドル、大深水海底油田が35ドル、オイルサンド開発が40ドルで、原油価格がこの水準を下回ると生産するほど赤字が増えるから、この採算分岐点が供給面でのフロア(下値)と考えられていた。

 産油国の予算もこの採算点を基準にしていて、2006年のカタールの国家予算は原油のFOB(出荷)価格を36ドル、サウジアラビアも輸出価格を35ドル程度にしていた。

 その後、原油価格は急速に上がり2008年6月に瞬間的に147ドルに高騰、翌年2月には世界金融危機で40ドルに反落したものの、その後は100ドル前後で高値安定している。1990年代は1バレル=20ドル台だったのだからまさに“異次元”の価格で、これによってドバイなどで巨大な不動産バブルが起きたことも前回書いた。

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