『かぐや姫の物語』中間報告会見にて。(左から)西村義明プロデューサー、朝倉あき、鈴木敏夫プロデューサー/[c]2013 畑事務所・GNDHDDTK

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先日、宮崎駿監督の引退会見が行われ、いま一度大きな注目を集めているスタジオジブリ。動員800万人、興収100億円を突破した『風立ちぬ』(公開中)の勢いもまだまだ衰えないが、そんな中、スタジオジブリが送り出す高畑勲監督の最新作『かぐや姫の物語』(11月23日公開)の中間報告会見が、9月17日にイマジカ東京映像センターで開催。プロデューサーの鈴木敏夫と西村義明とともに、主人公のかぐや姫役を射止めた朝倉あきが登壇した。

【写真を見る】公開されたプロモーション映像には感情を爆発させて野山を疾走するシーンも/[c]2013 畑事務所・GNDHDDTK

「先日は、みなさん引退会見にお越しくださって、ありがとうございます」と切り出した鈴木プロデューサーは、「宮さん(宮崎駿)は毎日会社に来てるんですけど、ぶらぶらしてます(笑)」と宮崎監督の近況を報告。また、高畑と宮崎がタッグを組んで制作した「アルプスの少女ハイジ」に触れ、「『かぐや姫の物語』の内容を宮さんに説明した瞬間、『ハイジだ!』って顔色を変えていました」と語り、宮崎監督も本作の完成に期待を膨らませているそうだ。

一方、次世代のスタジオジブリを担う若手プロデューサーとして出席した西村は、『ホーホケキョとなりの山田君』(99)以来14年ぶりにの高畑勲監督作となる本作について、「30分の絵コンテを作るのに4年半かかってしまった。制作が進まなかった理由はかぐや姫のイメージが湧かなかったから」だとコメント。「声を先に録ってしまえば映画が進むんじゃないかと考えたんですが、今度はかぐや姫の声が見つからない。高畑監督が言ったのは『いまの女優さんは受け身の声が多い。自分の意思を持った声がない』ということ。そんななか、オーディションで朝倉さんが声を発した瞬間に、彼女だったら可能性があると感じた」と、本作の制作秘話を明かしてくれた。

また「彼女の声は監督曰く“わがまま”だと(笑)」という西村の発言を受けて、「むしろ逆で、自己主張が苦手な方なんですけど(笑)」と苦笑していた朝倉。「オーディションはボロボロで…、うまくいかなかったと泣きながら駅まで帰ったほど。私のマイナスな性格の部分を評価されたのかと思って、手放しには喜べなかったです(笑)」と複雑な心境も吐露した。

会見では、主要キャラクターの声を担当するキャスト陣も発表となった。かぐや姫の幼馴染・捨丸役を高良健吾、育ての親となる翁役を地井武男、媼役を宮本信子がそれぞれ担当。このほか、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也、伊集院光、宇崎竜童、中村七之助、橋爪功、朝丘雪路、仲代達也ら豪華な布陣。昨年亡くなった地井との思い出を振り返り、朝倉は「とにかく温かい人。他のキャストの方々とのやりとりが素晴らしすぎて、心を全部むき出しにされてしまった…。本読みの段階で、私は泣き崩れてしまいました」と語った。

また、水彩画のようなタッチで荒々しく描かれた映像も話題となっている本作だが、会見冒頭には、かぐや姫の生い立ちから感情を爆発させて疾走するまでを描いた約6分間のプロモーション映像も初公開された。この映像を観て涙を流したという朝倉は、「言葉じゃなくて画面から、かぐや姫の痛々しいほどまっすぐな感情が伝わってくる」と大絶賛。西村プロデューサーも「監督は否定していましたが、この作品に関わっている全スタッフは、高畑監督の最高傑作であることを確信しています!」と自信をのぞかせた。

終盤には、西村が「今回はスタジオジブリ作品として提供していますが、今のジブリのスタッフと仕組みではこの映画は実現できないんです。鈴木さんから『高畑さんを連れて、もう1つのスタジオジブリを作れ』と言われたので、監督が実現したい画面を目指し、新スタジオを設立しました。監督自身も『今日のひとつの到達点を示している』と語っています。10年後、この作品を振り返ったときに、アニメーションのエポックメイキング的な存在になるだろうと。本作の前と後では、何かが変わっているだろうと思います」と、並々ならぬ現場の熱気を伝えてくれた。

日本最古の文学「竹取物語」をもとにした『かぐや姫の物語』。少年が空に憧れる『風立ちぬ』に対し、西村は本作が「少女が大地に憧れる物語」だと語る。高畑監督の新たなアプローチによって、かぐや姫の心情をより丁寧に描き、謎めいた運命の物語を紡いでいく。いよいよその全貌が明らかとなりつつある本作から、今後も目が離せない。【取材・文/トライワークス】