高橋洋一 1955年、東京生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年、大蔵省入省。理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、総務大臣補佐官などを歴任したあと、2006年から内閣参事官(官邸・総理補佐官補)。2008年退官。金融庁顧問。2009年政策工房を設立し会長。2010年嘉悦大学教授。近書に『世界で一番わかりやすいニッポンの論点』(ダイヤモンド社)。

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2020年東京オリンピック開催が決まった翌日、9月9日に内閣府から4−6月期のGDPが発表された。8月の速報値2.8%(前期比年率換算)から3.8%増と大きく伸びた。これをもって、政府は景気判断を「緩やかに回復しつつある」とし、甘利経済財政・再生相は「消費増税に向け好材料が1つ追加された」とコメント。安倍総理は10月初旬に決断を発表すると言っているが、今後のシナリオはどう展開するのだろうか。ZAi編集部は『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAIが作った世界一わかりやすいニッポンの論点10』の著者であり、アベノミクスブレーンの高橋洋一さんに消費税導入の今後の流れと展望についてインタビューした。

安倍首相は10月1日に会見で決断を発表

――CPIが対前年同月比0.7%増で2カ月連続のプラス、鉱工業生産指数が3.2%で2カ月ぶりの上昇、完全失業率は0.1%低下し3.8%にとの発表がありました。経済指標が相次いで改善し、着実に景気回復しているとの印象を植え付け、まるで世の中全体が消費税増税の判断材料である「景気回復」を声高に後押ししているかのようですが。

 そもそもGDPなどの経済指標の数値はいくらでも作れる。GDPが何%なら景気回復と言えるのか。前年比UPしていれば、それはいい数字なのか? 日銀の示しているインフレ目標は2%。このインフレ目標は2年前のマネーストックと密接な関係にある。

 マネーストック増加率が7%程度とすると名目GDP成長率4%程度になる。さらに、各種の規制緩和が行われれば、名目GDP成長率は4〜5%程度になるだろう。この数字は、リーマンショックがあった2000年代でもアメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデン並みで先進国では平均的な数字だ。もし骨太素案にあるような名目GDP成長率3%台で景気回復と言うのなら、それは先進国でほぼビリの数字だ。

 私は以前より消費税増税の前にやるべきことがあり、それを実行すれば、増税しなくとも財政再建は可能であると述べてきた。また、増税するにしても、インフレ目標2%の達成を見届けてから、つまり2年は増税をスキップすべきだとも考える。

――増税の地ならしがドンドン進行している現状をみると、消費増税シナリオの可能性は、残念ながら高いと言わざるをえないのではないでしょうか?

 ここまで安倍首相は、消費税について一言も言及していない。10月1日に自分が判断して発表するとしているだけだ。まわりの思惑とは別に、首相は消費税について自分なりの思いがあるのではないか。

――10月の最終判断に向け、さまざまな動きがありますが、簡単にご説明していただけますか?

 まず、自民党内では税制調査会が、消費税率を2014年4月に5%から8%に引き上げるかどうかを巡り、9月に党内の意見聴取に乗り出している。先ごろ、安倍首相が引き上げ判断の参考にするために行われた「有識者会議」では、出席者の約7割が「予定どおり増税すべきだ」との意見に集中し、2割は「1%ずつなど小刻みに上げるべき」、1割が「見送るべき」となった。これなどは、呼ばれた有識者を見れば、当たり前の結果だ。財務省の事務方にとって都合のいい人選がされていたからだ。

 たしかに自民党内でも引き上げに慎重な声も根強くある。しかし現在の内閣の布陣を見れば、増税論者で占められていることがわかる。仮に消費税増税を先送りするとなると、内閣改造、秋の国会で消費税法の改正をしなければならない。これについては、安倍首相は早い段階で否定している。

――すべてが、「増税」があたかも決まったかのように既定路線として語られつつあるように感じられますが?

 10日の閣僚懇談会では、安倍首相が成長戦略第2弾を含めた経済対策のとりまとめを閣僚に指示し、消費税を8%に引き上げることを想定した対応策が打ち出される始末。低所得者に1万円を配るといった「簡素な給付措置」など愚の骨頂だ。消費税を巻き上げておいて、それを国民にバラマキ、増税後の経済の落ち込みを少なくするというのは、馬鹿げた話だ。

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