有明コロシアムで行なわれた男子テニス国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループプレイオフ「日本対コロンビア」で、日本は3勝2敗でコロンビアから勝利を収め、16カ国で構成されるワールドグループへ2012年以来の復帰を決めた。

 日本のエースである錦織圭(ATPランキング12位、大会時)は、シングルスで2勝を挙げて、チームの勝利に大きく貢献。錦織には、昨年のプレイオフで負けて、ワールドグループ昇格からわずか1年で日本が降格した悔しさだけでなく、自分自身へのある思いがあった。

「デ杯は個人戦と違う気持ちの高ぶりがあるので、何か違うスパイスをこのデ杯で味わえると思った。もちろんチーム戦としてのスキルアップもそうですし、自分自身のレベルアップにもつながる。これを機に自分も1ランク上がれるように頑張りたい」

 USオープン初戦敗退時には、錦織にしては珍しく「気持ちが盛り上がらない、精神的に疲れていた」と口にしていた。デビスカップは団体戦ではあるが、錦織は、今回の戦いで自分の気持ちを立て直すきっかけをつかみたかったのだ。

 錦織は帰国してから、味の素ナショナルトレーニングセンターで、日本代表のチームメイトである添田豪と、この2週間毎日トレーニングを積み、大一番に備えた。

 特に、ゲームのキーとなるサーブは、いつもよりトスを低くして、テンポを早めて打つ練習をしていたという。

 オープニングマッチで、ストレート勝ちを収めた錦織は、時速202キロを記録したサーブや得意のリターンが良かったおかげで、グランドストロークのリズムが良く、最大の武器であるフォアハンドも、伸びのあるいいボールが打てていた。

「試合前は緊張もありましけど、しっかり練習してきて、どれだけいいプレイができるかという思いが大きかった。いい試合ができて、ほっとしている部分もある」

 当初、錦織は、シングルス2試合に加えて、ダブルスにも出場予定だったため、その練習も積んでいた。だが、初日の第2試合で、ダブルスパートナーの添田が5セットマッチの戦いで体力を消耗して敗れたため、大会2日目のダブルスは、伊藤竜馬/杉田祐一組が替わって出場した。これは、日本が事実上、コロンビア優位のダブルスを捨てて、最終日のシングルス2試合で勝利する作戦に切り替えたことを示していた。

「最初はもちろん(ダブルスに)出る気でいましたけど、(左)ひざが完璧ではないので......。ダブルスを落としたとしても、僕と添田君が(シングルスで)勝てる自信はあった」

 最終日(3日目)を迎えた時点で1勝2敗となり、コロンビアに王手をかけられていた日本は、もう負けられない状態だった。

「正直(日本チームの)流れは最悪でしたね」と語った錦織だったが、エース対決である第4試合で、約6000人のホームの観客の応援に後押しされながら、世界12位の力を見せつけて躍動した。自分から早く展開することを心掛け、相手に余裕を与えないキレのあるテニスを披露。そして、より強い気持ちで、絶対勝つと自分に言い聞かせながら錦織は戦い勝利した。

「シングルス2試合を終えて、とてもいいフィーリングをつかめてきている。僕自身としては、またひとつレベルアップできたかなと思う。精神的にも、テニスも良くなってきている」

 デビスカップで勝たなければいけないという思い、チームへの思い、日本を背負って戦う重み、さまざまな思いが錦織を奮い立たせ、錦織をさらに精神的に強くした。

 錦織の思いは第2シングルスの添田にも波及し、2勝2敗で迎えた第5試合で添田が勝利。日本は、来シーズンのワールドグループ復帰を決めた。植田実デビスカップ日本代表監督は、就任1年目で大仕事をやってのけた。

「彼ら(日本代表)が戦う本来のステージに戻れた。そこ(ワールドグループ)にいなければ、彼らの力を引き出せない。何としてでも、鍛え上げ成長した彼らを(ワールドグループで)プレイさせたいという思いだった」

 デビスカップが終われば、また通常の個人戦になり、それぞれワールドツアーを転戦していく。ただ、世界ナンバーワンのノバク・ジョコビッチや世界2位のラファエル・ナダルが、そうであるように、トッププレイヤーになればなるほど過密スケジュールになり、しかもハイレベルのテニスを要求され、精神的にも体力的にも負担は大きくなる。今シーズンの錦織は、アジア/オセアニアゾーンIの1回戦と2回戦は出場しなかったが、それでも錦織のデビスカップへの思いは変わらない。

「今回みたいに自分にいいきっかけを与えてくれるデ杯でもあるので、スケジュール的に、毎回出られるわけではないけど、もちろん出られる時は、出たいですね」

 日本は、世界16強で構成されるワールドグループでの対戦でまだ勝利したことがない。世界の強豪国と対等に戦い、勝利するには、日本チームのレベルアップが必要不可欠だ。

「ひとりひとりが強くなるしかない。みんなが強くなって、日本チームを底上げできればいい」

 こう語った錦織の目は、自信を取り戻し、強豪国にいるトップ10やトップ5の強敵との対戦を心待ちにしているかのように輝いていた。

神 仁司●取材・文 text by Ko Hitoshi