【名波浩の視点】

 ガーナに3−1で快勝した日本代表。コンフェデレーションズカップ以降、課題に挙がっていたディフェンスは、不運な形で1失点は喫したものの、改善の兆しを存分に見せてくれた。

 まず何より、最終ラインから最前線までの、守備のブロックの作り方がとても良かった。そのうえで、各選手の横のスライドがものすごく速くて、ブロックごとの縦関係の作り方も非常にスムーズだった。結果、相手がショートパスでつないでくる展開に対して、ほぼパーフェクトに対応し、狙いどころを絞って、うまくボールを奪っていた。ボールを奪ったあとの、ファーストプレイでもほとんどミスがなかったので、思わぬ形から守備が崩壊してしまうこともなかった。

 途中から日本の手堅い守備を前にして、ガーナが少し距離を長くしたパスやサイドチェンジのボールなどを増やしてきたけれども、そこでも混乱することはなかった。これまでの試合では、相手がそうした仕掛けを試みてきた際には、最初に作ったブロックの高さを保てなくなることが多かったが、この日は最後まで高い位置を保っていた。チームの共通認識のもと、最後方から最前線まできちんとコミュニケーションがとれていて、誰もが全体をコンパクトにして戦おうという意識を持ってプレイしていた。

 そんなチーム全体のつなぎ役を果たす、ふたりのボランチの働きぶりも際立っていた。献身的によく動いて、前線にも効果的に顔を出して、後方のカバーリングもきっちりこなしていた。彼らを含めて、グアテマラ戦、ガーナ戦と2試合でいい結果を残せたのは、代表メンバーが長い時間を一緒に過ごして、十分なトレーニングを消化できたことが大きかったと思う。

 欲を言えば、ベストメンバーのアタッカー陣をそろえたガーナ相手に、どれだけできるか見たかった、というのはある。ただ、この日のガーナのメンバーは決してレベルは低くなかった。ロングボールを蹴って身体能力にモノを言わせて攻めようといった大味なプレイに走ることなく、丁寧にボールをつなぎながら、組織的な攻めを見せていた。アフリカの中では、組織力も技術もズバ抜けているチームだけに、その攻撃を抑えられたのは価値がある。

 特に、ガーナの選手がボールを持っている際に、日本はその選手の視界に入っていない、ブラインドサイドのケアもしっかりできていた。つまり、対峙する選手だけでなく、その周りにいる選手もいい立ち位置をとっていた。ゆえに、本来ガーナが得意とする、ワンツーなどのコンビネーションによる突破が、この試合では影を潜めていた。

 一方、攻撃も悪くなかった。いい形を作って、3点取ったのは良かった。とはいえ、ザッケローニ監督が5、6点取れたと言っていたように、前半、決めるべきところを決められなかったし、FWの柿谷曜一朗はシュートを打てていないし、香川真司はミスが目立っていたし、攻撃面においては、まだまだ高めていかなければいけないことがたくさんある。

 攻撃の組み立てにおいても、後方から中盤や前線、中盤から前線へのボールの出し入れの際には、そのテンポをより速くする必要がある。ガーナ戦の前半はまずまずだったけれども、少しでも遅くなると、世界の強豪国相手には通用しない。ドイツやオランダ、スペインやフランスなど、ハイプレッシャーをかけてくるチームは、いいところをどんどん消してくる。そうすると、ボールを下げざるを得なくなってロングボールを蹴ったり、横パスを奪われてショートカウンターを食らったり、自滅的な形になりかねない。そのためにも、そういう強豪国を想定してプレイすることが、これからはより重要になってくると思う。

 グアテマラ戦に続いて、ガーナ戦でも、3バックを試したけれども、今後もオプションとして使っていくならば、3バックにおける攻撃についても、やらなければいけないことが多い。とりわけ、アウトサイドの長友佑都、酒井高徳の攻撃参加は皆無に等しかった。ビルドアップするときには、前線の3枚とポジションが重ねって、ボールを触ることさえままならなかった。今の状況ではあまりにも存在感がないので、彼らの生かし方をもっと考えなければいけない。そのためにも、彼らと前線の選手のポジション取りにどう変化をつけるかなど、チームとしてすり合わせをしていく必要があるだろう。

 あとは、前述した柿谷を含めて、改めて1トップの選手には積極性を求めたい。確かに柿谷は、本田圭佑と香川とのトライアングルにおける連係、ポストに入るタイミングや、彼らとかぶらないようなスペースへの動き出しなど、ふたりの動きをよく研究して、効果的な役割を果たしていると思う。でも、ガーナ戦ではシュートゼロに終わった(グアテマラ戦は1本)。

 個人的な考えでは、相手が恐れない、怖さがないFWは、代表のFWにはいらないと思っている。ガーナ戦で途中から出場した大迫勇也にしても、自ら仕掛けてチャンスを作りながら、本田にスルーパスを出してしまったシーンがあった。大迫は天を仰いで悔しがっていたけれども、Jリーグの試合であれば、間違いなくシュートを打っていたはずだ。

 要は、柿谷にしろ、大迫にしろ、周りの選手に気を使い過ぎている。欧州の若いFWだったら、本田や香川を平気でおとりに使って、どんどんシュートを打っていると思う。そのほうが相手にとっては脅威だし、それぐらいの積極性が彼らにもほしい。FWであれば、自らのシュートチャンスで周りの選手のことなんてまったく気にする必要はない。シュートを打たずに後悔するくらいならなおさらで、得点力のあるふたりだからこそ、もっとシュートを打ってほしいと思う。

名波浩●解説 analysis by Nanami Hiroshi