指定暴力団の稲川会系組長の開いたパーティーで歌を披露したとして、東京都公安委員会は60代の男性タレントに暴力団排除条例に基づく勧告を行った。芸能人に対する勧告は全国で初めて。

男性の名前が公表されていないため、いったい誰なのかと推測する議論がネットで盛り上がっている。

演歌歌手の名前が多数あがる

報道によると、男性タレントは2013年5月に都内で行われた組長主催のパーティーに出席し、組員に依頼されて2・3曲を歌った。組長側は「10万円を渡した」と言い、男性タレントは「お礼はもらったが金額は覚えていない」と説明。東京都公安委員会はこの行為を暴力団への利益供与と認定して勧告した。男性タレントは「数十年来の付き合いで、場を盛り上げるため歌った。今後はヤクザとは縁を切る」と話しているという。

今回本名が公開されなかったのは、東京都の暴力団排除条例の取り決めによるもので、勧告を受けてから1年以内に同種の違反をした場合は公表される。暴力団と数十年来の付き合いがある男性タレントは、どんな人物なのか。

ジャーナリスト溝口敦さんの『続・暴力団』(新潮新書)によると、芸能人の中でも特に演歌歌手が暴力団との関係が深い。「ヤクザの境遇や情感は演歌とぴったり重なり、特別に自分の持ち歌の作詞、作曲をプロに依頼したり、自分で好みの曲を吹き込んでCDにしたりという暴力団幹部も少なくない」。

2ちゃんねるでは男性タレントの推測が進み、暴力団との関係が噂されている演歌歌手の名前が多数あがっている。まず名前が出たのは演歌歌手の大御所K氏。稲川会の新年会に出席し、その年の紅白歌合戦を辞退した過去があることなどからだが、K氏は70代のため該当しない。他に大物タレントM氏らも取りざたされたが、いずれも年齢で候補から除外される。「歌手じゃなくてタレント。でも歌を歌う物まねタレントとかかなあ」といった憶測もでるなど、少ない情報からさまざまな候補があがっている。

「大物演歌歌手の場合は多いときは100万や200万という時期もあった」

また謝礼の金額から、男性を絞り込もうとする2ちゃんの書き込みもあり、「10万は安すぎるな多分知らん奴や」「見栄を重要視するヤクザが10万しか払わない時点で相当な小物だろう」という意見が出ている。

ジャーナリストの溝口敦さんも、パーティーで2・3曲を歌って謝礼が10万円というのは少ないと断言する。「10万円という金額から最近の暴力団の懐事情もうかがえる。通常は50万円ぐらい。大物演歌歌手の場合は多いときは100万や200万という時期もあった」と話す。「芸能人も公表されるという意味でマイナスになることをわかっているはずなのに、かなり思い切ったことをしている」と語るが、何十年もの付き合いがあると「義理があるから簡単に縁を切れるものではない」という。

ネットでさまざまな憶測が飛び交う中、2013年9月13日の東京スポーツは、勧告を受けた60代男性タレントは清水健太郎さんだと報じた。見出しに「暴排条例1号はシミケン」などと書いている。同紙の取材に対して清水さんの所属事務所は「一切お答えすることはできません」と答えている。