『レイザーラモンRGの洋楽あるある』レイザーラモンRG/竹書房
ジョージ・マイケルとボーイ・ジョージが見つめ合う構図がたまらない。イラスト担当は、洋楽に全く興味のないレイザーラモンHGだ。

写真拡大

「力のある芸人は、遅かれ早かれいつか売れる」と、言われているらしい。確かに! それこそ、2009年以降の有吉弘行だったり。それこそ、MUSE(英ロックバンド)のPVにパラパラ漫画を取り上げられて以降の鉄拳だったり。長い潜伏期間は避けられなかったが、結果、見事に陽の目を浴びている。

そして、何と言ってもレイザーラモンRG。永遠に続く千本ノックの如き“あるある荒行”を自らに課して以降のRGの輝きっぷりと言ったら、筆舌に尽くしがたい。その局地的人気を、“ドカン!”と広げた感がある。
特に東日本大震災が起きて間もない時期にTwitter上で披露された、絶え間ない“あるある”の連弾はどれだけ多くの人の心の支えになったか。「早く言いたい」とジラさせるのも忘れ、驚異的なペースで良質な作品を発表し続けていた。

今では、「RGと言えば“あるある”」「“あるある”と言えばRG」と評しても差し支えない境地に達している。Twitterでフォロワーから寄せられる「○○あるあるください」のリクエストに答え続け、なんと三年以上が経過したそうだ。
「答えた『あるある』は一万を超えるだろう。これは申請はしてないが、ギネス記録に違いない」
RGが胸を張るのは、8月に発売された新書『レイザーラモンRGの洋楽あるある』前書き部分において。そもそも、ギネスに“あるある”の概念はあるのか? それはさておき、「万物に“あるある”は存在する」と信じて疑わないRGが、洋楽縛りで“あるある”を量産してみせている。
「これは現代の吉田兼好、RGの『徒然草』とも言えるでしょう」(RG)
紛れも無い自信作の模様。さて、洋楽をとりまく“あるある”には、どんなものがあるのだろう? 一つ一つ、確認していきたいと思う。


「乳首出しがち♪」(ジャネット・ジャクソンあるある)
「ゲイをカミングアウトしがち♪」(エルトン・ジョンあるある)
いきなり、これである。「〜しがち」どころか、そんなに何度も乳首出しやゲイ告白をしてるのか疑問だ。というかRGの“あるある”は、その辺の細部をとっくに超越している。

と思いきや、不意に“毒”を見せ付けてくるから堪らない。愛あるからこその、ブッタ斬り。
「街中練り歩くビデオ撮りがち♪」(ビースティ・ボーイズあるある)
「みうらじゅん経由で知った人意外といがち♪」(ボブ・ディランあるある)
「亡くなってからファンだというやつ増えがち♪」(マイケル・ジャクソンあるある)
「あの曲があの映画のせいでなんかダサいものとされがち♪」(T・レックスあるある)
「PRIDEを良い席で見がち♪」(エリック・クラプトンあるある)

この勢いのまま、RGのジャーナリスティックな一面も見てみよう。「我が意を射たり!」と嬉しくなるような“あるある”が、満載だから。
「聴いてるとインテリっぽく思われがち♪」(エルビス・コステロあるある)
「楽器弾けない人たちに希望あたえがち♪」(ハッピー・マンデーズあるある)
「速弾きギタリストに都合良く使われがち♪」(ジョー・リン・ターナーあるある)
「静かに始まって一拍置いてから激しくなりがち♪」(リンプ・ビズキットあるある)
「プリンス以来の天才って言われて みんなCD買ってしまいがち♪」(テレンス・トレント・ダービーあるある)

ここで気付くのは、あまりに守備範囲の広い彼の趣味の裾野である。ハッピー・マンデーズを扱っておきながら、すぐさまジョー・リン・ターナーにも触れてみせる。
実は“コステロあるある”にもその匂いを感じたのだが、RGはいわゆる「音楽趣味差別」に物申しているのではないか? 「レディオ・ヘッドを聴いている者こそ位が高く、ボン・ジョヴィを聴いている時点ではまだまだ」みたいな。某専門誌で「リッチー・ブラックモアはゴミじゃ!」なる発言もあったが、その姿勢と比較すると彼はあまりにもピュアだ。

そんなRGによる、「洋楽誌あるある」も必見だ。
「すぐ60〜70年代の特集しがち♪」(ロッキンオンあるある)
「古いブルースやロバート・ジョンソン、フランク・ザッパ褒めがち♪」(ミュージックマガジンあるある)
「リイシュー盤が発売されるアーティストなどの特集しがち♪」(レコードコレクターあるある)
「藤木さんがブラインド・ガーディアンに85点以上つけがち♪」(BURRN!! あるある)

もっともっと、視野を広げてみよう。同書には、こんな“あるある”まである。
「オルタナティブ、グランジ系バンド、まずクラブ・クアトロでやらされがち♪」(コンサートあるある)
「海外ロケでヒューイ・ルイスに会いにいきがち♪」(ベストヒットUSAあるある)
「4曲目あたりが最初にシングルカットされがち♪」(アルバムあるある)
「プログレ系バンドのジャケットがアートだと言われがち♪」(CDジャケットあるある)
※例:『原子心母』(ピンク・フロイド)、『究極』(イエス)、『そして3人が残った』(ジェネシス)
「評価が高くてめちゃくちゃ売れたアーティストの次のアルバム、曲数めっちゃ増えがち♪」(アルバムあるある)
※例:『サンディニスタ!』(クラッシュ)、『ユーズ・ユア・イリュージョンI・II』(ガンズ・アンド・ローゼズ)、『イン・ユーテロ』(ニルヴァーナ)


先ほど「音楽趣味差別」にチラッと触れたが、実はそれって誰もが通る道だと思う。しかし、行き着く先は“ジャンルレス”でありたい。これこそ、最もカッコいい。デュラン・デュランを聴きつつ、一方でハウリン・ウルフも愛好する。そんな理想的な音楽生活を体現しているのが、まさにレイザーラモンRGだった。
「(『CDジャーナル』を見て)ジャケがカッコ良かったり評価が高いと買っていましたから、フュージョンのCDとかまで手を広げてたんですよ。だから変なことになっちゃったんです」(RG)
どこが! ちっとも、変じゃない。

ところで、「洋楽あるある」とは一体何なのか?
「(今までの書籍の)ほとんどが『誰に影響を受け、その時の世界観はどうだ』とかのお堅い音楽評論家が書く目線。友達と『あの曲、朝のワイドショーの曲だよね』と共感し合えるのが『洋楽あるある』」(前書き部分より)

音楽というジャンル内に限って言えば、こんな清々しい本は久し振りだ。
(寺西ジャジューカ)