今年4月、改正高年齢者雇用安定法が施行されたことで、会社は希望者全員を65歳まで継続雇用しなければならなくなった。では、65歳まで働くことを選んだ人の「年金戦略」はどうなるか。

 現在、信用金庫に勤める59歳のAさんは、61歳から年金を受け取れる世代だ。65歳までに受け取れる年金額は月11万円、4年間で計528万円を受け取れる。

 ただし、Aさんは60歳以降も働くことを希望しており、今の取引先の中小企業の経理として働くことが決まっている。先方から示されている月給は20万円だ。すると、「在職老齢年金」制度が適用されるため、受け取れる年金額は9万5000円となり、本来受け取れるはずの年金よりも月額1万5000円、4年間で72万円もカットされることになる。

 もちろん、正社員として厚生年金に加入して働くので、Aさんは65歳以降、「上乗せ年金」を受け取れる。

 65歳までに受け取れる年金を減らさずに、65歳以降に受け取れる年金を増やすことはできないのだろうか。年金博士として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏は、こうアドバイスする。

「働きながら年金を受け取る『在職老齢年金』は、65歳未満の場合、月の給与と年金の合計額が28万円以下なら全額をもらうことができます。Aさんの場合、60歳以降の合計額が31万円で、28万円の上限を超えてしまうから、超えた分の2分の1がカットされてしまいます。

 そういう場合、もし再就職先の中小企業の経営者と交渉できるのであれば、月給を17万円に抑えてもらう方法があります。とはいっても減らされるだけでは損をするので、残りの月3万円分は65歳でリタイアするときの退職金に上乗せして受け取れるようにすればいい。会社側も損がないどころか、給料支給を3万円抑えることによって、月々に負担しなければいけない社会保険料が減るので、メリットにもなります。

 そうすれば、65歳までに受け取れる年金は一切カットされず、月給20万円の時よりも多少減りますが、65歳以降に『上乗せ年金』も受け取ることができるのです」

 なぜ退職金なのか。それは、退職金は勤務年数1年につき40万円まで「退職所得控除」を受けられるという利点があるからだ。つまり、65歳まで5年間働くとすると、退職金のうち200万円までは課税されない。Aさんの場合は、月3万円の5年分で退職金は180万円になるが、200万円以下なので全額非課税にすることができるのだ。

※週刊ポスト2013年9月20・27日号