[其ノ二 FX プロディーラーの視点!]米ドルへの長期投資は今!?
FRBのバーナンキ議長が金融緩和縮小に踏み切り、ドル高トレンドが本格化するのは間近。ならば米ドル長期投資を考えるべき時期だ。プロが見据える投資のタイミングとは?


夏の米国経済指標次第で金融緩和の縮小→米ドル高加速が濃厚

今、全世界の投資家が固かた唾ずをのんで見守っているのは、米国FRB(連邦準備制度理事会)が?いつ量的緩和縮小に動くか〞です。

バーナンキ議長は「景気がよくなれば金融緩和を縮小する」と繰り返しています。しかし、その発言はさまざまな思惑を呼び、一時は米ドル高と同時に新興国の株や通貨が猛烈に売られました。「金融緩和政策の出口は失業率が6・5%に低下してから」といわれていますが、6・5%が明確な基準かどうかはわかりません。市場では当初、「緩和縮小は9月から」と推測されていたものの、その可能性は揺らぎ始めています。

ただ、来年1月の退任に向け、バーナンキ議長が全力を挙げて出口のほうに向かっているのは確か。年内に金融緩和が縮小されても不思議ではありませんし、遅くとも来年第1四半期には出口が見えてこないとおかしいでしょう。

むろん、FRBが実際に出口戦略を実行に移すためには、米国経済が力強く復活する必要があります。その意味で、この夏はまさに正念場です。

米国の景気回復にとって大切なのは、製造業がきちんと回復し、消費が刺激されて雇用情勢がよくなること。

米国では夏になると、古い工場が設備のメンテナンスに入ることが多く、製造業の生産活動が鈍ってしまうのが通例です。そんな状況で、生産活動や雇用が横ばいもしくは好転すれば、米国経済が非常に強いという証あかしになります。

なかでも自動車産業の回復は雇用、消費の両面で非常に重要。6月に1596万台という約5年半ぶりの高水準に達した米国自動車販売台数や生産台数の動向には注目です。

雇用回復という面では「労働参加率」という指標もあります。これは15〜64歳の人口に占める働く意思を持った失業者と就業者の比率を表したもの。毎月の雇用統計で失業率とともに発表されます。

米国の労働参加率は5〜6月にかけて上昇しており、6月は参加率が上昇したにもかかわらず、失業率は横ばいの7・6%と明らかに?いい数字〞になりつつあります。今後は労働参加率が増えて失業率が下がる理想的な状況が期待できるでしょう。



中国はバブル崩壊よりも強権政治の混乱のほうが心配…

日本では、7月の参議院選挙で政治のねじれも解消し、安倍政権が成長戦略を実行に移す環境が整いました。これまで期待感だけが先行気味でしたが、本当の意味でアベノミクスが始まるのはこれから。日本がデフレ脱却に成功して景気回復に向かうのが、日本サイドから見た円安・ドル高要因です。一方、最大の不安要素は、中国経済の失速です。中国では「シャドーバンキング」問題が取りざたされ、一部では「第2のサブプライム問題になる!?」と危惧する声も……。

しかし、そこは共産主義国家。国の威信にかけて7・5%の経済成長は死守するはず。ハードランディングは避けられると思いますが、怖いのは経済の低迷が政治の混乱につながることです。一枚岩だった共産党内部に亀裂が生じて爆発という事態になれば、世界の経済・金融市場への影響は計り知れません。

このように世界は今、米国と新興国の?せめぎ合い〞で動いていますが、影響度でいえば、やはり米国です。

FRBが緩和縮小から利上げにまで踏み込む段階はまだまだ先で、退任するバーナンキ議長の後任者にその任務は委ねられることになります。

ただ、FRBの出口戦略が明確になれば、米ドルは単なるトレーディング通貨ではなく、長期保有に耐えうる?投資通貨〞として復権する可能性も強まります。だからこそ、世界中の投資家の視線が、夏の米国経済指標に熱く注がれているのです。



【今月のカリスマ軍師】
上田眞理人(MARITO UEDA)
FXプライム 取締役

東京銀行、モルガン銀行、ドレスナー銀行などで為替ディーラーや外国為替部長を歴任後、現職。



この記事は「WEBネットマネー2013年10月号」に掲載されたものです。