来春の消費税増税プランが着々と進む中、国はその後の景気落ち込みを最小限に食い止めるべく、テコ入れ策を数々用意している。その代表格が住宅ローンの負担軽減だ。

 返済の全期間、金利や返済額が変わらないため安心の住宅ローンとして利用者も多い「フラット35」。国土交通省が全額出資する独立行政法人の住宅金融支援機構が銀行の窓口などを通じて融資を行っている。いわば国が支援している住宅ローンといえる。

 それが2014年4月から住宅購入額のすべてが借りられるようになるかもしれない。つまり、頭金なしでも夢のマイホームが買えるというわけだ。一見すると借り手に優しい政策のように思えるが、「日本版サブプライムローンになる」と警鐘を鳴らすのは、ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏。

「そもそも頭金を準備できない人に容易に借金をさせるなんて、国による“押し貸し”に他なりません。住宅を購入する場合、通常1割、2割以上の頭金を用意するのは原則です。

 不動産は高額ですから、例えば3000万円の物件の2割にあたる600万円の頭金を出さずに30年間返済したとします。すると、金利分を上乗せしなくても元本だけで月に1万6000円以上増える計算になります。返済能力の低い人なら、それだけで苦しくなります」

 米国で住宅バブルの崩壊を招いたサブプライムローン(信用度の低い人向けローン)危機は記憶に新しい。日本でその轍を踏みかねないと、深野氏は危惧している。

 国もみすみすローン破綻者続出による「不良債権」を増やすわけにはいかない。そのため、購入額の9割を超える融資については、審査の厳格化や金利の上乗せを検討しているが、その内容はまだ明らかになっていない。

 中には、「返済が難しくなったら住宅を売ればいいだけ」と高を括っている利用者もいるだろう。しかし、現実はそれほど甘くない。住宅評論家の山下和之氏が語る。

「新築で住宅を買うと、その後売ろうとしても市場では中古住宅の扱いで、通常は新築時価格から2割程度は価格が下がります。それに対して、当初はローン残高はなかなか減少しないので、担保割れ状態になり、一定の自己資金を用意しないと売却できず、最悪の場合はローン破綻に陥るリスクがあります」

 幸いなことに住宅ローン金利は足元では低下傾向だが、中長期的には上昇は避けられない。日銀の『展望レポート』によれば、住宅ローン金利と連動する傾向も強い消費者物価上昇率は、2014年度が1.3%(消費税増税分を含めると3.3%)、2015年度が1.9%(同2.6%)としている。

 そういう意味では金利動向に一喜一憂しなければならない「変動金利型」よりも、フラット35のような「固定型」で期間が長いローンを組んでおいたほうが賢明といえる。しかも、頭金がいらないなら、低金利で消費増税前のいまのうちに買っておこうと駆け込む心理も分からないではない。だが、前出の深野氏は「急ぐ必要はまったくない」という。

「前回、消費税が引き上げられた1997年も駆け込み需要の先食いが起こり、その後、住宅需要が冷え込みました。それでも不動産業者は在庫を売り切り、一定の開発も続けなければならないので、増税分ぐらいの価格は待っていればすぐに下がるのです。

 それよりも大事なのは、将来の返済能力をよく見極めることです。いまは終身雇用の時代ではないので、景気回復で一時的に給料が増えても、いつまた減らされるか分かりません。ならば、ローンを組む人はできるだけ少ない借金で返済期間を短くできるタイミングまでマイホームを買わないという選択肢だってあるのです」(深野氏)

 住宅評論家の山下氏もまったく同様の意見だ。

「住宅ローンは20年、30年と返済が続きます。シッカリと家計管理できる家庭でないとローン破綻のリスクがつきまといます。一定時間をかけて、家計を管理しながら頭金をつくる習慣ができていない家庭は危ないと思います」

 ろくにライフプランも考えずに、目先の「頭金0円」に惑わされてマイホームを購入すれば、一家の城を奪われるだけでなく、人生も台無しにしかねない。いくら国が住宅取得を促しても、最終的には自己責任においてローンリスクを食い止めるしかないことを、改めて肝に銘じたい。