日本のものづくりを支えてきた接着の仕組みとはどのようなものなのか。創立90周年を迎えた日本を代表する接着剤メーカー『セメダイン株式会社』を尋ねた。

 セメダイン・第三事業部に籍を置く木村修司氏は、大ヒット商品「セメダインスーパーX」など数々の商品開発を担当し“接着剤博士”の異名を持つ社歴45年目の大ベテラン。その木村氏に接着の仕組みについて解説してもらった。

「接着とは、二つの面が化学的あるいは物理的、あるいは両者によって接合された状態であると国際的に規定されています。その媒介役であり、モノとモノをくっつけるために間に入って作用する材料が接着剤というわけなんです」

 そう説明したうえ、木村氏は「実は今でも接着についてはわからないことが多いんです」と補足する。

「そもそも45年前まで接着は“経験の科学”といわれ、なぜモノとモノがくっつくのか、その根本原理がよくわかっていませんでした」

 現在では「液体によって濡れる」「液体から固体になる」「モノとモノの距離がなるべく近づく」という条件下で接着することが確かめられている。ちなみに、3番目の距離の条件については、0.5ナノメートル=100億分の5メートル以内という超至近距離になることが求められる。

「分子と分子がピッタリ接近すると、分子同士が互いに引っ張り合います。だけど、人間の眼にどれだけツルツルに見える物体も、表面には必ず凸凹があって、とても0.5ナノメートルという至近距離まで近づけることはできないんです」

 確かに、平らなガラス板を2枚合わせただけでは、決してくっつかない。しかし、そこに水を垂らせば状況は激変する──水は形を変えて動くので、ガラス表面の凸凹に入り込む。水はガラス分子に近づき、ガラスとの間に接着作用を発揮するのだ。

「だから、すべての接着剤は液体という形状をとっています」

しかし、水の接着効果にも弱点がある。2枚のガラス板は上下(垂直方向)の力に強いが、横の力(水平方向)にはあっさりとスライドしてしまう。

「これを改善するには、液体が固体になる必要があります。接着剤も、時間が経過すれば液体から個体に変化するようになっているんです」

※週刊ポスト2013年9月13日号