「家内には『お弁当は今後もよろしくお願いします。まことに申し訳ありませんが』と言いました」

 スタジオジブリに毎日、愛妻弁当を持参していたという宮崎駿監督(72)。会見で妻・朱美さんについて聞かれた宮崎監督は、言葉少なにこう答えた。

 9月6日、東京・吉祥寺のホテルで宮崎監督が引退会見を行った。日本のアニメ映画を牽引し続け、“日本のディズニー”と海外からも賛辞を受けている宮崎監督を48年間、陰で支えてきたのが3歳年上の朱美さんだ。

 宮崎監督はアニメ制作会社の東映動画で、同じアニメーターとして働いていた朱美さんと’65年に職場結婚。結婚の際は共働きの約束をしていたが、二男・敬介さんが生まれたころに夫妻は「共働きは無理」と判断し、朱美さんは家庭に入り育児に専念するようになったそうだ。宮崎監督の長年の友人は、朱美さんについて次のように語る。

「奥さんは東映動画の先輩アニメーターで、“絵のうまさ”で高い評価を受けていたんです。当時は、宮崎さんより将来を嘱望されていたそうですよ」

 また、宮崎監督が会長を務める市民団体『淵の森の会』の事務局長・安田敏男さんは、朱美さんにはアニメーター仕事への未練があったと話す。

「奥さんは『絵は私のほうが宮崎よりもうまいのよ』と言うんです。『でも、結婚したら私が絵を描く仕事をやめることになっちゃった』と、私に寂しげに愚痴を漏らしたこともありました。本当は、自分の作品も作りたかったんでしょうね……」

 ’92年、宮崎監督は中日新聞のインタビューで《女房には申し訳なかったと、いまもそう思っています》と夫人への感謝と謝罪の念を吐露している。前出の安田さんはこう続ける。

「宮崎さんは、奥さんに負い目があるんです。ですから、『今度は私にやらせてよ』ということになったら、宮崎さんが奥さんの出番を作ってあげるかもしれないですね。2人の絵は、どちらが描いたかわからないくらい似ているんです。奥さんが絵コンテを作って、宮崎さんが奥さんのサポートに回り、2人で新作アニメを完成させる可能性もあるんじゃないでしょうか」