[其ノ一 株ファンダ編]外国人投資家が実践、今どきのスロー投資
「国際優良株を買って中長期保有」、これこそが株式投資の王道ですが、国際優良株の中でも効率よく上がる銘柄を選びたいもの。この時期、どんな銘柄を買えばいいのでしょうか?


任天堂が上がったのは東証・大証の統合が理由ではない

最近は、意外(?)な好パフォーマンス銘柄が出ています。代表例としては任天堂で、6月中旬に底入れし、7月上旬に指数よりひと足早く年初来高値を更新しました。「5・23ショック」の傷跡がない、そんな動きをしています。

任天堂がなぜこの時期に上がったのか、市場でよくいわれたのが次のような説明でした。7月16日に東証と大証の現物株市場が統合し、「主市場が大証から東証主市場になることで機関投資家の買いに期待できる」。しかし、これはかなり怪しい解釈です。機関投資家の買いで最も多いのが、TOPIX(東証株価指数)に連動するように運用するパッシブファンド。ただ、任天堂は大証と東証に重複上場していたため、すでに任天堂を保有しています。日経平均採用といった思惑もありましたが、その発表は9月です。先回り買いをするには早すぎますし、入るかどうかも不明ですしね。さらに言えば、実は機関投資家にとって、東証か大証かという市場の違いは関係ありません。最近は、東証、大証、そしてPTS(私設取引システム)の中から一番有利な値段で自動的に約定できるシステムが使われているからです。

そうなると、任天堂が強い背景は? 上昇過程には外国人投資家の存在があります。7月5日に大量保有報告書を提出したのが、キャピタル・リサーチ(保有割合7 ・27%↓8・90%。7月29日現在は10・20%)。このキャピタル・リサーチは、アクティブファンドとしては世界最大手。いわゆる「ロングオンリー」といわれる買い手=買ったらすぐには売らないタイプの海外マネーです。日本の株式市場には外国人投資家の売買動向がかなり影響しますが、そうはいっても日々の商いの大半はヘッジファンドの短期売買。ヘッジファンドが超短期で手じまいしてしまえば、買い越しにも売り越しにもカウントされません。キャピタル・リサーチのようなロングオンリー系の投資家が買うことで、これまでの外国人投資家の買い越し基調はつくられてきたわけです。そういった投資家が任天堂を買い集めているという事実は見過ごせません。

任天堂といえば、かつては国際優良株の代表格でした。しかし今や、売買の少ない地味な大型株。日本にいるからこそ任天堂の不調を感じ取れるので買い手が少なく、売り手もすでに手放し済みという構図が想像されます。そして、短期売買も減る中でロングオンリーの買いだけが残る、これぞ好需給のお手本なわけです。

日本の投資家があまり手がけなくなった銘柄で、ロングオンリーの買いが流入している銘柄が、今どきのスロー投資に最も適しています。投信を買うよりもキャピタル・リサーチのポートフォリオを模倣したほうが賢明でしょう。先の参院選での某立候補者ではないですが、日本人があまり触らなくなった?今はひとり〞的な銘柄から外国人投資家が買っている銘柄を探し、それが上昇したときに「もう一人じゃない!」と拳を上げられるのではないでしょうか。



ロング中心のキャピタル・リサーチが買い増し中の5銘柄

任天堂(東1・7974)
1万2680円(100株)
これからの最大の期待材料は日経平均への採用。組み入れに伴う買いインパクトは甚大で、約2000億円に上る。

ナブテスコ(東1・6268)
2043円(100株)
6月下旬にキャピタル・リサーチが新規で5.01%取得。傘下には3Dプリンターを手がける企業も。

TDK(東1・6762)
3625円(100株)
もっかのところキャピタル・リサーチが保有比率6.71%まで買い増し中。HDD 用磁気ヘッドの受注は回復傾向。

MonotaRO(東1・3064)
2388円(100株)
5月末にキャピタル・リサーチが5%強取得。外国人に優良中小型「モノタロウ」は知れ渡っているとも。

ツクイ(東1・2398)
973円(100株)
キャピタル・リサーチが大量保有する中では小型株の部類。高齢化の進行が業績拡大の裏づけになる企業だ。

※株価は2013年8月8日現在。



【今月のファンダ師匠】
岡村友哉(YUYA OKAMURA)
金融ジャーナリスト

証券会社の営業、金融情報ベンダーでアナリストを務めた後、現職。日経CNBCでキャスターをこなす。



この記事は「WEBネットマネー2013年10月号」に掲載されたものです。