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山形県河北町谷地では、「冷たい肉そば」が長年にわたって愛されている。実はこのエリア、「そば=冷たい」が主流。猛暑の夏も酷寒の冬も関係ない。ちょっとした秘境のご当地メニューとも言えそうなこの肉そばを、地元ライターが調査してみた。

○酒のつまみの肉、〆にそば

戦前、この河北町で「ちょっと一杯」といったら「そば屋で」が主流だった。というか、お酒を飲める場所はそば屋しかなかったのだ。決して豊かとはいえない当時、メニューの種類も本当に少なく、ほとんどのお客さんが馬肉の煮込みをつまみに酒を飲み、最後は盛りそばでしめるというスタイルだったと筆者は祖父から聞いている。

つまり、なぜ温かいそばではなく冷たいの? という質問への回答は実に単純。 そう! 理由はシンプルに「酒のつまみ」だったから。

冷たければそばは伸びにくい。肉そばを頼んで、上にのった肉をつまみにまずは一杯飲む。ゆるりと酒を楽しみ、最後にそばとつゆでしめる。そんな大人の酒飲みの習慣にピッタリのそばとして地域で愛され、一気に拡散していった。

しかし戦時中になると、つまみ用の馬肉は手に入らなくなり、ほかの肉で代用することになったらしい。当時、町に多かった鶏肉を使ってみたら思いのほか客の評判もよく、時を置かずして鶏肉の肉そばが正式メニューになった。コクのあるダシに負けないような、コシの強い田舎そば。そんなそばの上にコリコリとした食感の親鶏と小口切りのネギが搭載された、シンプルで奥深いそばが生まれたのだ。

○コリコリとした歯ごたえの鶏を濃い味で

2013年9月現在、町内には肉そばを食べられるお店が20軒ほどある。うち16軒が「谷地の肉そば会」加盟店として、味を守り続けているようだ。味は店ごとに個性があり、「私はあの店がお気に入り」「私はこっちの方が好き」など人それぞれ好みも分かれるので、アンケートで人気の順位を決めるのは実に難しい。

しかし今回は、そんな店の中でも地元っ子に評価が高く、口コミから旅行雑誌などでも頻繁に取り上げられている人気の店舗を紹介したい。数多くの声が上がった、サービスよし、味よしで人気の3店舗である。

まずは「お食事処 葵」の「葵の肉そば」(600円)。定番の親鶏の肉はコリコリと少し歯ごたえがあり、全体に硬めだが、味わい深くておいしい。タレはお約束の甘塩っぽい感じ。味つけは濃い方といっていいだろう。口コミでは数多い「谷地の肉そば」の中でも、この店の味つけの濃さは上位に来るといわれている。

●information

お食事処 葵

山形県西村山郡河北町谷地月山堂372-2

○中太縮れ麺をあっさり風味で

続いて「いろは本店」の「冷たい肉蕎麦」(650円)。スープは油も多いが、決してしつこくはない。ちょうどよく落ちついた味だ。あっさり風味で控えめなダシがいい。麺は中太の縮れ麺。色が黒く風味があり、しっかりとしたコシのあるそば。具の鶏肉はうまみがギュッとしまっている。ネギとの相性もよい鶏肉が絶妙である。

●information

いろは本店

山形県西村山郡河北町谷地中央2-1-15

○具だくさんの鶏そばやラーメンも人気

最後は「一寸亭本店」の「冷たい肉そば」(650円)。鳥のダシがきいたあっさりスープが好評。一度食べると病みつきになる人も多く、冬の時期でも超人気メニューだという。具だくさんの鶏そばや天ざるもおすすめ。

面白いのは、地元ではこの店のラーメンもうまいと評判であること。 ただし地域で有名な店舗であり、 平日休日問わず混みあっていることも多いので、待ちを覚悟で来店してほしい。

●information

一寸亭本店

山形県西村山郡河北町谷地所岡2-11-2

谷地には、発祥の地ならではの共通したこだわりがある。肉はこりこりした食感とコクのあるだしがとれる鶏肉を使い、そばはつなぎ入りの田舎そばを使うこと。

近年は、この冷たい肉そばで町おこし活動を行う 「かほく冷たい肉そば研究会」も設立され、ご当地グルメの拡散に地域をあげて邁進(まいしん)している。ご当地うどんやラーメンの一大ブームの中、ここ山形の秘境の冷たい肉そばが全国区になる日が来ることを、地域の人々は期待している。

※商品価格は時期によって変わることがあります。詳細は各店舗までお問い合わせください

(OFFICE-SANGA)