これぞ今は亡き心の師匠、先代鳴戸(元横綱隆の里)流だ。

 白鵬、日馬富士をはじめ、幕内力士たちは8月22日から27日までインドネシアのジャカルタで海外巡業を行った。大相撲の海外巡業は、平成20年のモンゴル・ウランバートル以来、実に5年ぶり。東南アジアで行われるのは初めてだ。
 インドネシアと日本の国交樹立55周年記念と銘打った裸の親善大使の訪問に、当地の盛り上がりは大変なもので、到着直後の入国手続きなどはすべてフリーパス。移動も白バイの先導が付くなど文字通りVIP待遇で、連日7000人を超える観客が詰めかけ大盛況だった。

 そんな中で、ひと際ハッスルしたのが先場所、白鵬、日馬富士の両横綱を破りながら11勝止まりに終わり、平成10年の3代目若乃花以来、15年ぶりの日本人横綱誕生が白紙に戻った稀勢の里(28)。
 総合優勝こそ日馬富士に譲ったものの、トーナメント形式で争われた初日、またしても準決勝で白鵬、決勝で日馬富士を相次いで破り、優勝したのだ。

 稀勢の里にとってはロサンゼルス巡業以来、2度目の海外巡業タイトル。本命の白鵬を寄り切って破ったとき、日本と同じように無数のザブトンが舞い、会場の熱狂は最高潮に達し、「横綱に勝って、海外の人から声援をもらうのはうれしい。自信にもつながる」と会心の笑みを浮かべていた。
 「海外巡業といえば、お遊び半分の力士がほとんど。白鵬も、2日目の準決勝の舛ノ山相手に猫だましを繰り出して喝采を浴びるなど、明らかに勝負は二の次でした。でも、こういうとき絶対に手抜きをしなかったのが先代鳴戸。『みんなが遊んでいるときに全力で取って、たとえ少額でも賞金をもらい、それでお土産を買えば、周りが喜ぶし、自信にもつながる。オレはそうやって30歳過ぎで横綱になった』とよく話していました。稀勢の里もそれを思い出したのかもしれません」(大相撲関係者)

 成果が楽しみな秋場所(両国国技館)は9月15日から始まる。