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冷たい麺を唐辛子入りの辛いタレにドボッとつけて食べる「広島風つけ麺」。ご存知、タレの表面は真っ赤っ赤。辛いものが苦手な人はヴィジュアルを見ただけで「ぎぇ〜!!」と絶叫モノのご当地グルメだ。今回は、激辛マニアたちにも愛されている人気の店の魅力に迫ってみたい。

○辛さレベルは思いのまま

この「広島風つけ麺」。関東で言われる「冷麺」とは大きく趣向が異なり、しょうゆベースのつけダレに唐辛子、ラー油、酢、ゴマなどが入った激辛のタレが特徴だ。具も湯通ししたキャベツ、モヤシ、オクラ、チャーシュー、ゆで卵などがボリュームたっぷりに盛られている。

素材の個性に加え、訪れた客がその辛さのレベルを選ぶことができるのも面白い。つまり、ゲストの望みどおりいくらでも辛くできる。これが「広島風つけ麺」の他の地域にない特色のひとつだ。

しかしこの特色には、実は賛否両論がある。とりわけ他県からの飛び込み客の一部には、「広島の有名店で辛めを注文したところ、正直、辛すぎて味が分からなかった」「辛いばかりで素材の味を全く楽しめない」というネガティブ批評があるのも事実なのだ。こういった外部の声を、地元広島のつけ麺店舗はどのように捉えているのだろうか?

「それは最初から辛すぎを注文しちゃったんじゃないかな?」そう笑顔で語るのは、老舗店「冷めん家」のおかみさん・角中弥美(なおみ)さんだ。

例えば、この「冷めん家」でもタレに使うラー油は粉一味とゴマ油をしっかり混ぜて作っているので、それだけでも他店と比べてしびれるような辛さがある。ゆえに、「初めて食べるお客様には、まずは普通の辛さでとオススメしています」とのこと。

○じわじわと麻薬のように効いてくる辛味

まずは柔らかめのマイルドな辛さをオーダー。そうすればダシのうまさもジワジワと実感できるのだという。「何回か食べると徐々に慣れてきます。2回、3回と経て、そのうちに、かなりの辛さもやみつきになってくるんですよ。辛さに慣れてきてから少しずつグレードを上げていけばいいんです」。うむむ。まるで中国は四川省の食文化のようだ。

筆者はかつて、四川省成都で長期滞在をした経験があるが、火鍋をはじめとした激辛料理がごく自然に生活に溶け込んでおり、地元の人々は唐辛子だらけの激辛スープを平然と食べていた。同じものを最初に筆者が口にした時は、辛さを通り越して喉から胃にかけて痛みが走ったものだった。

「辛味を楽しむ料理というのは、じわじわと麻薬のように効いてくる食だ。初めて食べたら、まずその辛さに驚くのは当然だよ」。そう中国の友人にも言われたのを思い出す。まずは1回目をマイルドな辛味で味わい、2回目、3回目と趣向を変えて挑戦していくと、あるときにそのうまさに気づき、やがて、やみつきになっていくのだという。

「冷めん屋」では「普通盛り」(900円)をオーダーした。野菜はどれもシャキシャキと新鮮でおいしい。つけダレは、確かに最初はラー油の辛みに気を取られていたが、ダシをよく味わっていくと、ふわりとしたカツオ節だろうか、節系の味を感じた。ダシも酢も醤油も企業秘密で何が入っているかは教えてもらえないが、物足りなさは全くない。前面に出た辛みを、野菜と多彩なスパイスがバランスよく支えている。

●information

冷めん家

広島市中区十日市町2-9-22

○そびえたつ野菜の山

現地で評判のよい店がもう一軒あると聞き、次にそのオススメの店へと足を運んでみた。向かったのは「つけ麺本舗 辛部 十日市店」。この店は某旅行情報誌のランキングでも1位に輝いたという人気店だ。「辛さを受けとめる麺のコシが味のこだわりさ。店によって太い細いがあるけどね、うちのは太めの麺だよ」と店長の市川剛さん。

広島のつけ麺はスープも麺もひんやりと冷たい。昔は夏季限定品だったそうだが、今ではオールシーズンで食べられるという。市川さんは、「そりゃ広島でも、この商品は夏に一番出る。しかし、冬に食べる人も増えてきたよ。彼らは本当に広島風つけ麺が好きなマニアたちさ」と言う。つけ麺は「普通サイズ」で650円だ。

卓上には、唐辛子、ゴマ、ラー油が整然と一列に並び、常連客たちだろうか、手慣れた指使いで各スパイスを加え、麺を味わっている。市川さんはそんな常連客を温かいまなざしで眺めながら、「うちの具材はね、定番のキャベツ、キュウリ、ネギ、チャーシューだよ」と教えてくれた。

そう。先ほども書いたが、ここ広島のつけ麺の特徴は、野菜のボリュームにもある。多くの店で富士山のように、器から天にそびえるかのごとく野菜が盛りつけられた麺が、ドカンと運ばれてくる。ただ真っ赤な激辛麺をすするだけじゃあ、味が単調になる。そこに山盛りシャキシャキ野菜が入ることで、味わいに変化と深みが加わるのだ。

●information

つけ麺本舗 辛部 十日市店

広島市中区十日市町1-4-29 1F

「辛さ」ゆえに賛否両論のある「広島風つけ麺」だが、是非とも一回だけ食べて論評するのではなく、何度か繰り返し各店を訪れ、その辛さや個性を味わってほしい。

(OFFICE-SANGA)