8月25日、ロンドン五輪のボクシング金メダリスト・村田諒太が、プロデビュー戦で2R・TKO勝ちを収めた。

そして、この夜、テレビ中継(フジテレビ系)を見ていた視聴者にリング上の村田並み、あるいはそれ以上の強烈なインパクトを与えたのが、ゲスト解説の香川照之だった。

大人気のドラマ『半沢直樹』(TBS系)でヒール役を憎々しく演じている実力派俳優にして、芸能界随一のボクシングオタクの顔も持つ彼。村田戦では、選手入場前から試合への期待を熱く語り続け、いざ開始のゴングが鳴るや、「どんな1Rを見せてくれるか!」「ちょっと(ふたりの)距離が詰まってきましたよ、最初から!」など、ほとんど実況状態。さらには村田のパンチが炸裂するたびに「おっ! おっ!」と反応するなど、解説者&実況アナウンサー&リングサイド客の三役を一度にこなしていたのだ。

彼がボクシング中継のゲストに招かれるのは村田戦が初めてではない。過去にWOWOWが中継した世界戦に何度か登場していて、その際もテンション高めではあったものの、“ひとり舞台”というほどではなかった。

しかし、村田戦は地上波でのゴールデンタイム中継。マニアだけでなく、日頃ボクシングと縁のない人々もチャンネルを合わせているのだ。そんな間口の広い番組で、一気にリミッターが外れたかのような前のめりっぷり。

香川の斬新なスタイルの解説に対し、ネット上では放送直後から賛否両論まっぷたつだった。「知識が豊富すぎ」「さすが東大卒」などの肯定的コメントが見られる一方、「うるさい」「試合に集中できない」などの声もあった。

某民放局のスポーツプロデューサーA氏が言う。

「今回の彼は“越えてはならない一線”を越えていたように思います(笑)。実況アナやほかの解説者にほとんどしゃべらせていない。しかも早口で、話している内容の専門性が高すぎる。おそらく多くの視聴者は、彼が何を言っているのか、よく聞き取れなかったはずです」

だが、それもこれも、香川が人並み外れたボクシングマニアであるがゆえ。何しろ彼は幼少期から古今東西の名勝負のビデオを収集しまくっていただけでなく、役者としてまだ無名だった頃には、専門誌『ボクシングマガジン』で、さまざまな角度からボクシングを考察する連載コラムを持っていたほどなのだ。

二十数年前、彼を書き手として起用した同誌の元編集長で、現在はボクシングライターとして活躍する原功氏は、香川の解説ぶりをこう見ている。

「WOWOWの世界戦中継の収録スタジオで香川君と一緒だったことがありますが、番組全体のバランスを見渡しながら、自分に求められている役割を見事に果たしていましたよ」

つまり、村田戦の中継でも、われを忘れて暴走したとは考えづらいというのだ。

「あれだけ頭のいい人です。出演者ごとの役割分担をないがしろにするわけがない。あくまで臆測ですが、フジ側が彼に対し、『こういう感じで』とリクエストしたのかもしれません」(原氏)

なるほど、それなら納得がいく。考えてみれば彼ほどの名優が自分を客観視できないわけがない。

ならば、次回、フジ側は香川にいかなる要望を出し、それを受けた彼はどんな“演技”を披露するのか? 村田の第2戦は勝負の行方だけでなく実況にも注目だ!