アスワンのクルーズ埠頭     (Photo:©Alt Invest Com)

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 前回、エジプトの政治的混乱と小麦価格の関係について述べたが、今回はエジプト旅行で感じた「効率的な社会」と「非効率な社会」について書いてみたい。

「社会が効率化すると、かつてのよきものが失われてひとびとは不幸になる」と主張するひとがいつの世の中にもいて一定の支持を集めている。だがこういうひとたちは、「非効率な社会」がどんなものか知っているのだろうか。

 たいていの場合は、江戸時代のような、誰も見たことのない過去が理想化される。しかし世界には、伝統的で非効率な社会がいくらでもある。そういう国を訪れてみれば、なにがほんとうかすぐに気づくだろう。

トラブルがつきものの観光ツアー

 旅行者であれば、ナイル川流域の古代遺跡群はいちどは訪れてみたい場所だ(いまはちょっとタイミングが悪いかもしれないが)。アスワンからルクソールへ3泊4日でナイル川を下るクルーズはエジプト観光のハイライトで、多くのクルーズ船が就航しているからカイロ市内の旅行代理店で簡単に予約できる(日本の旅行代理店でも扱っている)。コム・オンボ神殿やホルス神殿を見学しながらのんびりとナイル川を旅し、最後はルクソールのカルナック神殿や王家の谷を訪れる。地中海やカリブ海など豪華なクルーズはたくさんあるが、きっと忘れられない体験ができるだろう。

 ただし、この旅には些細なトラブルがもれなくついてくる。

 ホルス神は太陽神ラーと並ぶ古代エジプトの代表的な神で、ハヤブサの顔を持ち太陽と天空を支配する。最初は、このホルスを祀った神殿を観光したときの出来事だ。

 ホルス神殿はアスワンとルクソールのほぼ中間に位置する古都エドフにあり、エジプトでもっとも保存状態のよい神殿としても知られている。この神殿に行くにはクルーズ船が停泊した桟橋から馬車を利用することになっていて、道路脇にずらりと並んだ馬車にガイドが次々と観光客を割り振っていく。

 この国を旅する観光客は、なにかのイベントがあるたびに、それは有料なのか無料なのかを確認する癖がついてしまう。あらゆる機会にチップ(バクシーシ)を要求され、1日か2日で“チップ過敏症”になってしまうからだ。

 このときも馬車に乗る前に、「それは無料なのか」とヨーロッパ人の中年夫婦がガイドに訊いた。ガイドは自信たっぷりに、「交通費はすべてクルーズ料金に含まれているのだから、君たちは1銭も払う必要はない」といった。それにもかかわらず御者は、神殿を見学して桟橋に戻ってきた観光客に、1人あたり1ドルの料金を請求したのだ。

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