マクドナルドが日にち限定で販売した単品1000円の「クォーターパウンダージュエリー」を買い求める行列ができたことを覚えている人も多いだろう。少し高い商品が売れる「ちょい高」消費の本当の姿について、大前研一氏が解説する。

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 価格が少し高めの商品が売れる「ちょい高」消費が堅調だという。

 日本経済新聞(8月17日付)によれば、2013年4〜6月期決算で、アートネイチャーは20万〜50万円の高価格帯のオーダーメイドかつらが売れ行きを伸ばし、スターバックスコーヒージャパンは中心価格が500〜600円と高めのデザート風飲料「フラペチーノ」の販売が好調で、客単価が600円弱とセルフサービス式カフェより高い「喫茶室ルノアール」を展開する銀座ルノアールもビジネスマンの利用が増え、いずれも経常利益が大幅に増加した。

 このほか、セブン-イレブンの「セブンプレミアム」などコンビニの高めのPB(プライベート・ブランド)商品、マクドナルドの1000円バーガー、牛丼チェーンの高めのメニュー、ダイソンの羽根なし高級扇風機などが「ちょい高」商品の例として話題になっている。

 だが、こうした「ちょい高」は一時的なブームの徒花で、再び遠からずモツ鍋と焼酎が人気を集めた時のように「ちょい安」になる。それはサイクルであって、巡り巡っていくものだ。新聞やテレビは、三つか四つの事例や現象をとらえてすぐに安易な“流行”報道をするが、それに踊らされてはいけない。

 また、今夏のボーナスは全般的に上がったというが、未だ構造的に給与が上がったわけではない。となれば、「ちょい高」の一方で、ほとんどの消費者は他のジャンルで倹約したり、「ちょい安」商品や「格安」商品を買ったりしてバランスを取っているはずだ。要は、支出の“配分”が多少変わっただけで、全部「ちょい高」消費ができるのは、金持ちだけである。

 ただし、日本は相対的に見て金持ちの少ない国である。東京は世界でも1億円以上の資産を持っている人が最も多い都市と言われているが、その中身は不動産が中心であり、しかも10億円以上、100億円以上のレベルになると一気に減って、ニューヨークやロンドン、シンガポールなどより格段に少ない。つまり、「ちょい高」以上の本格的な高値志向には、なりようがないのだ。

 そもそも、安倍晋三首相が「最低でも物価を2%アップさせてみせる」と言い、それで日本銀行が2%の物価上昇率目標(インフレターゲット)を導入したのだから、今後は否が応でも「ちょい高」にならざるを得ない。しかも、円安によって原材料を輸入に頼っている食料品や石油製品などは、これから続々と値上がりするだろう。

 さらに、来年4月から予定通り消費税が8%に上がれば、おのずと何もかもが「ちょい高」になり、国民の生活は厳しくなる。「ちょい高」消費が続いているのは、増税前の駆け込み需要が起きているという一面もある。

※週刊ポスト2013年9月13日号