このコラムは、大袈裟なネタではないけれど、知っているとちょっと自慢できる「あの街の歴史エピソード」を紹介します。第九回は中野区をピックアップします。

【中野駅北口には、犬公方綱吉が作らせた犬屋敷跡が】

中野と言えば、まず思い浮かぶのは、中野ブロードウェイ。アニメや漫画関連の店舗が多く、サブカルチャーの発信地として知られる中野ブロードウェイは、全国はもちろん、海外からも多くの観光客を集めています。そんな世界的なサブカルチャーの街、中野にも、歴史的ないわれを持つ場所や重要な文化財は数多くあります。その中でも、ちょっとユニークなスポットをご紹介しましょう。

まず一つは、JR・地下鉄東西線中野駅の北口方面にあります。中野ブロードウェイからも近い中野区役所前の敷地に、犬の銅像が並んでいるのを目にしたことがある人はいるでしょうか。これは、江戸時代、この場所を中心に、広大な「犬屋敷」があったことを示すもの。「生類憐みの令」で有名な五代将軍徳川綱吉が、当時、江戸の郊外だった中野に、江戸の町の野犬を収容・保護する施設を作ったのです。施設は、「お囲い御用屋敷」と呼ばれ、面積は何と約30万坪、収容された犬の数は、10万頭にも及んだと言います。また、屋敷の名にちなみ、このあたりは旧町名では「囲町(かこいちょう)」と呼ばれていたそう。

【哲学の世界を身近に感じられる異色の公園、哲学堂公園】

西武新宿線の新井薬師前駅近くにある「哲学堂公園」も、中野区有数の名所であり、非常にユニークで珍しい歴史スポットです。ここは、哲学者の井上円了が哲学や社会教育の道場として作った公園。中野区有形文化財、東京都名勝公園にも指定されています。

円了は、明治37年に哲学館大学(現在の東洋大学)を創設しますが、それを記念して、孔子・釈迦・カント・ソクラテスを祀った「四聖堂」を建設しました。四聖堂は、哲学堂とも呼ばれたため、それが公園名の由来となったそう。公園内には、四聖堂を始め、六賢台、宇宙館、絶対城など、哲学の世界を表現した明治・大正期の古い建築物があり、期間限定で内部が公開されています。

犬屋敷があったころの農村地帯から、日常生活とサブカルチャーが混在する個性的な街へと変化を遂げてきた中野駅周辺ですが、近年ではさらに再開発が進み、都心の街らしい新しい表情を見せるようになりました。ただ暮らしやすいだけでなく、知的好奇心を刺激し、住むこと自体を楽しませてくれるのが中野区の魅力。中野駅周辺のほか、西武新宿線の沿線の街にも手ごろな賃貸物件が多く、若者や学生には特に人気の高いエリアです。

文●高倉 都(エフスタイル)

参考/中野区HP:

中野区都市観光サイト まるっと中野:

哲学堂公園: