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セブン銀行はこのほど、同行のATM取引画面と明細票を大幅にリニューアルした。これにより、全国に1万8,000台以上あるセブン銀行ATMが、より一層使いやすくなった。今回は、リニューアルを担当した同行ATMソリューション部の内田万美子さんと水村洋一さんに、新画面の開発の経緯やリニューアルのポイントを教えていただいた。

○通常の開発手法とは異なる開発手法を採用、そのわけは?

同行ATMの取引画面は、2010年に読みやすいフォントを採用するなどのリニューアルを行ったが、今回は、それ以来の大胆なリニューアルとなる。

「かねてより当社コールセンターへお客さまより『文字が小さくて読みづらい』といったお声もいただいていましたので、今回のリニューアルは『次の10年』も見据えて、利用していただく全てのお客様にとってさらに使いやすいATMを目指しました。10年という長いスパンで見た場合、高齢化社会が進んでいきます。誰にでもより見やすい画面を作りたいという想いが、開発の入口にありました」(内田さん)。

開発にあたってATMソリューション部では、関連部と共同で、2年前の夏から一般のモニターの方々に対面インタビューを行ってきた。インタビューには、コンビニATMを普段使うかどうか、使う頻度、年齢層、男女など、多様な属性を持つ方々に集まってもらった。「普段思っていることを言っていただきました」(水村さん)。

そこで多く出てきたのは、「画面のボタンや文字が小さい」「画面に出てくる情報量が多くてわかりにくい」といった意見。この2つが第一に改善すべき課題となった。

今回は通常のシステム開発手法と異なり、短期間で複数の簡易的な試作品を作ってはすぐにモニターの方に操作してもらい、反応を検証し、また次の試作品をすぐに操作してもらうというプロセスを踏んだ。

「通常の手法でこの規模の開発をすると平気で半年とか1年とかかってしまいます。そこで今回はすぐに試せるような最低限の機能のみ備えた新しいデザイン案をA案、B案、C案と短期間で複数開発して、モニターの方の反応をつぶさに観察し、どれの反応がいいか、どれが使いやすそうか、どれだと使うのに困ってしまうのかを検証させていただきました。そしてまたその反応をもとに新たなデザイン案を複数作る、ということを繰り返しました」(水村さん)。

開発にあたって使用されたのは、同行の中にあるATMが10台以上並ぶ部屋で、その光景はかなりインパクトがある。「この部屋に、基本的にはモニターの方を1人ずつお招きして検証作業を行いました。複数いらっしゃると、他の人に遠慮したり、本音が出てこなかったりするのがその理由です」(水村さん)。

膨大な試行錯誤を繰り返しながら、最終的にこれだという案が決まったのは昨年夏。開発を始めた一昨年の夏から1年かかってのことだった。そしてこの案を元に、最終案をシステム化するための作業が始まった。

○目と心にやさしい「丸ボタン」を採用、文字を大きくし背景は白地に

リニューアルされたATMが一般の利用者にもお目見えしたのは、今年5月30日。この時はまだ一部のATM、一部の取引きのみだったが、ついに8月28日、全国のセブン銀行ATMが、提携しているすべての預貯金金融機関と証券会社の取引画面と明細票が大幅にリニューアルされた"やさしいATM"へと切り替わった。

新しい画面では、大きな丸い目立つボタンを採用。文字は1.5〜2倍に大きくし、背景が何色でもはっきり読めるよう、文字の後ろを白くして見やすくした。さらに、説明文も短く簡潔にし、文字数も約半分に短縮した。

これにより、「画面のボタンや文字が小さい」、「画面に出てくる情報量が多くてわかりにくい」といった課題を解決。しかし、そこには多くの苦労があったという。

「単純に文字を大きすると画面が見づらくなりますし、文字を減らしすぎても情報が正確にお客様に伝わらなくなってしまうので、文字の大きさと文字量のバランスが重要でした。以前の画面で使い慣れているお客様もいらっしゃいましたので、これまでの操作感も損なわないように、今までより使いやすくなったよね、と言ってもらえるよう工夫しました」(内田さん)。

ボタンについては、「画面の中で優しい印象が伝わるといいなと思ったので、今までの四角いボタンから丸みをもたせたボタンにしました。丸い方が、モニターの方に見ていただいたときに、よりボタンらしくて押しやすいとか、印象が柔らかくなる、などの意見をいただいていました」(内田さん)。

セブン銀行のATMはお客様がカードを入れるとそれぞれの提携金融機関のオリジナルデザインの画面に切り替わる。違和感なく安心してご利用いただくための配慮だ。「これまで文字の色は原則黒で、背景の色は各提携金融機関によって異なりました。しかし、色の組み合わせによって読みづらい場合もありました。そこで、白地の背景を文字の下に入れることで、背景がどんな色でもよみやすくなったと自負しています」(水村さん)。

○アニメーションを導入して、カードの取り忘れなど利用者の関心を喚起

改善点はまだある。第三世代ATMと呼ばれる最新型のATMでボタンが点滅して操作を誘導するなど、アニメーションをこれまで以上に広く導入した事だ。ここを見てくださいと矢印が動いたり、次に押してくださいとボタンの周囲がぐるぐると回って教えたりしてくれる。

特に、「カード、明細票、現金のお取り忘れ」を防止するために、これらが画面上のアニメーションと連動して出てくるようになっている。

「カードをお取り忘れするお客様が結構いらっしゃるので、これを何とかしようということで、幾つかの方法を模索してきました。例えば画面上に真っ赤な文字でカードを絶対に取り忘れないでと書くのも一つの方法だと思ったこともあります。ですがある時、アニメーションでこれから出てくるカードを画面上で動かしてはどうかと思い立ちました。動くものがあると、人間そこを見るじゃないですか。それがカードなど画像だと、視線が誘導されて直感的に受け取ってくれるのです」(水村さん)。

さらに、アニメーションのほかにも、使うたびに新鮮な印象を持っていただけるようにと、心地よいサウンドや音声、季節感を感じられる画面を採用している。

今回のリニューアルで変更対象となった取引画面の数は、約2,000画面。銀行ごとに画面を作る必要があり、入金や出金、たまにしか出てこないエラー画面などの画面数を総計するとそれだけの数になったのだ。

○明細票もシンプルに、重要な項目が目に入りやすく

明細票もシンプルになり、取引金額や残高など、お客様が確認することが多い項目を上部に配置し、必要な情報を大きな文字で表示するようにした。

「1項目1行しか書かないという原則にしました。お客様がATMを使った後に知りたいことは、自分が何をやったか、いくら下ろしたか、手数料はいくらで残高はいくらか、というシンプルなものです。これまではこうした情報がどこにあるのか分かりにくかったのですが、重要な項目をぐっと上に上げて、大きいフォントにして、目に入るようにしたのです」(水村さん)。

○カラーユニバーサルデザインの認証も取得

今回のリニューアルでは、銀行など預貯金金融機関及び証券会社のお取引画面(ご利用時間・手数料などのご案内を除く)についてカラーユニバーサルデザイン認証を取得。さまざまな色覚タイプの方にも見やすく分かりやすい色使いになっている。

「何の配慮もしないでここ緑、ここ青というふうにやると、色覚タイプによっては、同じ色に見えたりします。そういうことがないような色使いがあって、それにのっとった仕様にしているのです。膨大な数の画面をひとつひとつチェックするのはものすごく大変でした」(水村さん)。

いかがだっただろうか。2年間かけて開発された、セブン銀行の"やさしいATM"の取引画面と明細票。開発の陰で、さまざまな試行錯誤や苦労、工夫があったことも分かっていただけたのではないだろうか。この記事を読まれた方は、ぜひ、その使い心地をセブン-イレブンなどで試してみていただきたい。

(石田哲也)