金の玉をふたつ持つ掟ポルシェ氏。

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 アイドル界の論客としても知られる掟ポルシェ氏が、シーンの最前線を語る集中連載第4回。最終回となる今回は、アイドルをプロデュースするうえで大切なビジョンとはなにかを語ってもらった。

第1回:ハロプロはソフトレズ容認へ!? 掟ポルシェが語る『アイドルと恋愛』
第2回:BABYMETAL、BiS階段...「規格外のアイドル」が次々登場する背景を掟ポルシェが分析
第3回:掟ポルシェが語るハロプロの真価 つんく♂サウンドの「特殊性」とは?

――ハロプロ以外では、掟さんが最近、特に注目しているグループは?

掟ポルシェ(以下、掟):東京女子流、Negicco、hy4 4yh(ハイパーヨーヨ)、Especia、アップアップガールズ(仮)、ライムベリーあたりでしょうか。特に東京女子流は、メンバーのキャラクターとやっている音楽が対極にあるのが面白い。平均年齢15歳ぐらいの女の子なんだけど、やっているのはこの上なく渋い大人の音楽。70年代のブルース・ロックやスティービー・ワンダーみたいなブラック・ミュージック、80年頃のA.O.Rなどの要素が曲に散りばめられていて、サウンド・プロダクションが豪華です。最新シングルの『運命』なんて90年代のニュージャックスイングっぽさも感じられたり、現代のいわゆるベタなアイドル曲とは、そのフォーマットと目指すものが完全に別次元にあって、その洗練が際立っています。歌謡曲マニアがいてもたってもいられなくなるラインを完全に押さえている。その大人びた曲を大人が圧倒的な歌唱力をもって普通に歌ったら、それは今までの歌謡の歴史の中にあったものになりますが、質朴な十代の女の子の歌声がそこに乗ることで化学反応が起き、新鮮な驚きが生まれます。

 プロデューサーの藤原俊夫さんは、たどり着きたい正解がハッキリと見えている人。アレンジャーの松井寛さんが藤原さんのアイデアを最短距離で的確に形にしていく。制作のチーム女子流には完全に正解というものが見えているんです。アイドルにどういうことをやらせたいのかが明確にあるのが強み。あそこまでビジョンがハッキリ見えている制作チームはなかなかいませんね。

――歌い手のポテンシャルを超えている曲をあえて用意していると?

掟:難しい曲を少しずつものにしていく経過が応援したい気持ちを喚起して良いという捉え方もあるし、自分の場合は、音階の一番上の部分やサビで声量のいる部分が時に裏返ったり、パーフェクトに歌いきれてないこと自体が美徳と思っています。アイドルの歌はテクニカルになりすぎると、前回にも書いた、アイドルの「可愛さ=拙さ」という本懐が薄れて、魅力の一端が損なわれてしまう恐れがありますし、今の状態ですでにベストではないかと。

 あと、東京女子流はセンターの新井ひとみさんがとても不思議で面白い。15歳なんですけど、近年、「宇宙人が時々自分の意識に入ってくるので交信している」と言う。普通ならアウトでしょうが、朴訥とした純真な佇まいの新井さんが言うと、「新井ひとみが言うのだから虚言ではない」と確信できるものがある。でも、メンバーの中でも大人びていて現実的な思考の小西彩乃さんは、(んなわけねーじゃん)と思っているのか、「じゃあさ、宇宙人に今晩のご飯は何を食べたらいいか聞いてみてよ」なんて、いじわるを言う。すると新井さんは笑顔のまま表情ひとつ崩さず、「わかりました、聞いてみます(ややななめ上を凛と見つめて)…………(何かの答えが降りてきたようにハッとした顔で)きました! 今晩のご飯はすいとんです」って(笑)。なんで宇宙人が15歳の少女にすいとんを食えとアドバイスしてるんだ、いや、それ以前になんで宇宙人がすいとん知ってんだよとか、いろいろ思いますが、新井さんがいうのだから、まぁ、その、100%真実です。年齢に不似合いなまでの純真過剰がもうたまらないですね。卓越した楽曲を歌っていても、やっているアイドルたちが音楽に飲み込まれていない部分があるのがすごいんですよ。

――音楽に飲み込まれない、というのは?

掟:歌い方のクセだとか、メンバーのキャラクターだとかが楽曲のポテンシャルに負けず拮抗して、より素晴らしいものを生み出してしまうこと。そういう意味では、10年活動して最近になって初のオリジナルアルバムを出した新潟のNegiccoも、キャラクターの清廉さが曲との相乗効果を生んでいます。最新シングル『アイドルばかり聴かないで』のプロデューサー小西康陽さんは、一聴してわかる小西サウンドが持ち味。故に歌っているアイドルの曲というより、「小西康陽の曲」になりがちではあります。しかもこの曲はアイドルヲタが同じCDを何枚も買う現代のアイドル産業構造の歪みをそのまま小西さんが歌詞にしていて、アイドル本人が歌うのはシャレにならない部分があるはずなんですが、いまだに新潟在住で、地方の女の子特有のスレてなさを大量に持ち合わせるNegiccoが歌うことで、曲の毒気をポップに昇華してしまっている。これは、実はすごいことだと思います。

 『アイドルばかり聴かないで』は、小西さんが作るアイドル曲仕事の中でもぶっちぎりのホームラン曲だと思いますし、2010年代のアイドル歌謡を代表するぐらいのすごい曲だと思っています。両者の相性がよかったということもありますが、まさかここまでいいとは、と。通常のNegiccoの曲は、彼女たちと同じく新潟在住のプロデューサー・connieさんが全面的に制作していますが、彼が作る泣きメロのダンサブルな曲もとてもオリジナルな質感を持っていて素晴らしい。Negiccoの清涼感のある歌声とキャラクターは、どんな曲にも飲み込まれない。10年続いているグループにはやはり理由があります。聴いてるだけで心が洗われるような気がしてくるんですよね。

――アイドルが楽曲の力で成功するためには、何が必要なんでしょう?

掟:独自の正解を持っているワンプロデューサーの元で、同じ路線の音楽を続けていくっていうことが大事なんでしょうね。結果を出してきたグループはそういう傾向が強いと思います。中田ヤスタカさん、小西康陽さんや藤原俊夫さんも、自分の作風のオリジナルを信じ、圧倒的な自信を持っている。プロデューサーに正解のビジョンが見えていて、それを具現化し続けている限りは大丈夫だと思っています。

――例えば、中田ヤスタカさんの継続の仕方とは?

掟:中田ヤスタカさんは音色とメロディーセンスにオリジナリティがあって、ご自身の作風からほとんどブレずに曲を作り続けている。元ネタをそのまままるごと引用したりもしますが、元ネタに対して上に乗っけているメロディーが特徴的なため、元ネタよりもいい曲に聴こえさせる力がある。売れている作曲・編曲家にはいわゆる“節”があるものだと思いますが、中田さんの書くメロディにもしっかりと“中田節”がある。Perfumeに曲を作り続けて約10年、その間変わらず中田節だけをやり続けているから、海外でも評価される。また、同じような曲を継続していると、飽きられるという問題もあるかと思いますが、音楽に変化がない分、リスナー層がうまく入れ替わっていくことも出来るんですよ。

 Perfumeの場合、最初はアイドルファンしか聴いていなかったのが、時が経つに連れ一般層や同世代の女の子とかにメインのリスナー層が入れ替わっていった。アイドルというジャンルから違うリスナー層を獲得するという難しいことに成功し、いまではアイドルと呼ぶのに戸惑うぐらいの風格を漂わせている。ロックフェスのトリをとってもなんの違和感も異論もない。かつてのアイドルが誰も成し得なかった偉業だと思います。

 アイドルというのは、極論すれば若い女の子がその若さ故の輝きの力だけで成立するものであったりもします。でも、明確なビジョンを持つワンプロデューサーで、同じ方向性の音楽を続けていくことが出来れば、歳を取り若さの輝きが薄れていった時でも、純粋にその音楽が好きなファンは残る。アイドルのプロデュースをする上で、そこはすごく重要なポイントだと思っています。

(取材・文=編集部)