思春期特有の少年少女が抱える葛藤、友情を描いた“あの花”が劇場版で登場!/[c]ANOHANA PROJECT

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2011年は、原作を持たないオリジナルストーリーのアニメが一際注目を集めた年だった。今秋から来年にかけて完結編となる新作の劇場版の公開が控えている「まどマギ」こと「魔法少女まどか☆マギカ」や、「タイバニ」こと「TIGER&BUNNY」がそれだ。そして、「あの花」こと「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」も、2011年を代表するオリジナルアニメの1つ。前述の2作と同様、8月31日(土)から『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』として劇場版が公開される本作は、フジテレビ系列のアニメ放送枠“ノイタミナ”で全11話が放送されたヒット作。深夜アニメでありながら、実は普段アニメを見ないような層からの支持が非常に高いことが特徴なのだ。

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大の仲良しだった男女6人組が、そのうちのひとりの女の子の事故死によって疎遠になってしまう。ところが高校進学後、未だに過去を引きずり不登校気味になっていた少年の前に、死んだはずの幼馴染が成長した姿で出現。これをきっかけに再び集まった仲間たちが、それぞれ過去のトラウマと向き合い、再び絆を取り戻していくストーリーだ。大前提として「死んだはずの少女が現れる」というファンタジーはあるものの、他は若者たちの葛藤、ぶつかり合い、恋心、絆など、繊細な心情を丁寧に描いた王道の青春物語。いわゆる“アニメっぽさ”は薄く、まるで良質な実写ドラマのような印象を受ける。同じ2011年のオリジナルアニメである「まどマギ」や「タイバニ」が、“魔法少女もの”や“ロボット&ヒーローもの”といったアニメの定番を踏襲しつつ新機軸を見せた作品であったのに比べると、「あの花」は普段アニメを見ない層にとっても敷居が低く感じられるのだ。

緻密な風景描写と独特のロケーションも物語をうまく盛り上げている。舞台となっているのは埼玉県秩父市で、実際の街並みが劇中に登場。リアリティにあふれ、本当に登場人物たちが存在しそうな感覚にさせられる。本作を盛り上げようと、地元の自治体や企業が協力的だったことも効果的に働き、近年のアニメに多い“聖地巡礼”も大いに話題となって、若い女性のファンも多く訪れているようだ。また、“夏”を描いているのも一つのポイントだろう。定番ともいえる『となりのトトロ』(88)から、最近では細田守監督による『時をかける少女』(06)や『サマーウォーズ』(09)、さらに原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』(07)、沖浦啓之監督の『ももへの手紙』(12)など、一般的にもヒットした名作アニメが多く存在しており、その延長のような感覚で違和感なく受け入れられたのではないだろうか。

ちなみに、登場人物たちと同世代の若いファンだけでなく、20代後半から30代の多くの大人も本作に魅了されているのだが、それは「懐かしい!」と思わせるような要素が多く含まれているから。幼い頃に秘密基地で遊んだ記憶だったり、何かに夢中になって駆け回ったりと、苦い思い出も含め、過ぎ去ってしまった夏休みを思い出し、あるあると思わずうなずきながら見てしまうのだ。さらに、アニメ放送当時から約10年前にヒットしたZONEの名曲「secret base 〜君がくれたもの〜」が、女性キャラ3人のカバーによってエンディング曲として使用されているのも絶妙な点。第1話のクライマックスからいきなり、学生だった頃を思い返して涙腺を刺激された人は少なくないだろう。

そんな普遍的な魅力を持った本作を作り上げたのは、「とある科学の超電磁砲(レールガン)」や「あの夏で待ってる」などを手掛け、丁寧な演出に定評のある長井龍雪監督。08年の人気アニメ「とらドラ!」を共に手掛けた脚本家の岡田麿里、イラストレーターの田中将賀と本作で再び組み、見事ヒットさせることに成功。2012年には芸術選奨新人賞「メディア芸術」部門を受賞している。37歳とまだ若く、今後の活躍が期待される注目の気鋭監督だ。今回の劇場版ではテレビシリーズの最終回から1年後を描いており、回想としてテレビシリーズの内容も振り返りながら物語が進行するので、1本の作品として楽しめるように仕上がっている。ジブリは見るけど深夜アニメは見たことがない、という人にこそオススメ「あの花」。ぜひ夏の終わりに劇場で味わってみては?【トライワークス】