夏以降、買い戻しによる上昇「ショート・カバー・ラリー」の可能性がある
ドル建て金価格が節目となる価格を下回り、下げの勢いが増している。背景には6月下旬のFOMC後のバーナンキ議長の発言やファンドによる「ショート」の積み増し、そして、プログラムによる売買が下げ相場を推し進めている。


金市場から投資マネーの流出が続いている。代表例として金ETF(上場投信)の残高の減少が止まらない。

最大銘柄「SPDRゴールド・シェア」は年始から6月25日までの間で381トン(28%)の減少となった。時価で計算すると日本円で約1兆5000億円がこの1銘柄だけで流出したことになる。

ドイツ銀行のレポートなどから判断すると、売却した約75%はファンドとみられており、株式市場や為替市場に移し替えがあったようだ。また、日本株への資金移動もかなりの規模になったもようだ。

4〜6月期で見た場合、250〜270トンの減少で、四半期ベースでは過去最大になりそうだ。一方、この時期にインドの輸入量が300トン超に上っていることから、この間のETFの減少分は、需給バランス上、中国やインドの買いで吸収されたようだ。

4月中旬に2日間で200ドル超の歴史的な暴落があった。そのとき、「当面は需給に均衡する価格帯を探るような展開で、それには1〜3カ月を要し、上下に不安定な値動きが続きそうだ。1280ジか」と記した。それ以降の高値は1487・2ドル(5月3日)、安値は1229ドル(6月27日)と想定したレンジの下限あたりに位置している。

いまだ底打ちが見えない背景のひとつに、先物市場のニューヨークCOMEX(商品取引所)でファンドの売り攻勢がある。直近のファンドのポジション(オプションを除く)は、買い建て(ロング)519トン、売り建て(ショート)383トン。差し引き136トンの買い越し(ネット・ロング)に。この水準は2005年6月7日の121・6トン以来で、ファンドのロングは整理が進んでいるといえる。

ポイントは383トンまで膨れ上がったショートで、過去最高の規模となっていること。6月のFOMC(連邦公開市場委員会)後の会見で、QE3(量的緩和第3弾)の縮小スタートを「条件がそろえば年内に」としたFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の発言によりさらに膨らんだ。この売りは先物取引だが、最長4カ月以内の買い戻しの必要があり?買いのエネルギー〞がたまっているといえる。つまり夏から秋にかけて想定通りの景気回復、雇用回復がなければ、金市場では買い戻しによる上昇、「ショート・カバー・ラリー」が見られることになりそうだ。



亀井幸一郎(KOICHIRO KAMEI)
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表

中央大学法学部卒業。山一證券に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。




この記事は「WEBネットマネー2013年9月号」に掲載されたものです。