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トルコ中央銀行のバシュチュ総裁は27日の国営通信会社とのインタビューで、金利を通貨リラの防衛手段とはしないと述べ、年内にさらに金利を引き上げる可能性を否定しました。そして、具体的な内容は明かさなかったものの、"意表を突く"手段で通貨を防衛する考えを示し、年末までにリラが1米ドル=1.92リラへ反発するとの見通しを明らかにしました。

しかしながら、総裁発言を受け、リラは27日に対米ドルで前日比約2%の下落となり、史上初めて1米ドル=2リラ台となりました。なお、内戦の続くシリアで、政権側が市民に対して化学兵器を使った疑いが強まり、米国などがシリアに対する軍事介入に近く踏み切るとの観測が台頭したことも、リラの下落要因となりました。

(※上記グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)

市場参加者のほとんどは、将来の金利引き上げ見通しなど、軟調が続くリラの支えとなるような強いメッセージを今回の総裁発言に期待していました。しかし、総裁は、驚くほどの自信をうかがわせたものの、これまでのリラの下落ペースが急にもかかわらず、通貨安阻止に向けての具体策を欠いた冴えない発言を行ない、市場を失望させました。総裁が今回、信頼を得られなかったことは、リラのさらなる軟調につながる恐れがあります。

市場を最もがっかりさせたのは、翌日物貸出金利を年内はこれ以上引き上げないと総裁が明言した点です。外貨準備を用いた為替介入によってリラの下落抑制をめざしてきたトルコ中央銀行は先月、リラ防衛の強化に向け、2011年10月以来となる主要金利の引き上げに踏み切り、短期金利の上限となる翌日物貸出金利を引き上げたのに続き、今月20日にも同金利の追加引き上げを決めたばかりで、必要に応じて追加的な引き締めを行なう方針を示していました。しかし、総裁は、これ以上の金利引き上げによる引き締めは景気に悪影響を及ぼすと考えている模様です。

金利引き上げに代えて、外貨準備を用いた為替介入が示唆された点にも警戒が必要です。トルコは、通貨下落の抑制に向けた為替介入に、今春以降、約90億米ドルの外貨準備を費やしてきました。このため、さらなる為替介入に用いることができる外貨準備の額は400億米ドル程度と、決して多くありません。また、為替介入だけではリラの下落を抑えるのに不十分と考えられます。それだからこそ、今回、総裁は、通貨防衛に向けての"意表を突く"手段の重要性を強調したとみられます。そして、中央銀行が有するいくつかの手段によって、年末までにリラを1米ドル=1.92リラへ上昇させることが可能と考えている模様ですが、その術は明らかにされていません。

より確かと考えられるのは、足元の経済統計です。7月の消費者物価指数は前年同月比+8.88%と、昨年9月以来の高い伸びとなりました。このところのリラの下落や原油価格の上昇などを踏まえると、今後、物価動向が著しく改善するとは期待し難い状況です。また、国際収支の面でも、見通しは満足できるような状況にありません。経常赤字の対GDP比は2011年の9%後半から12年には約6%に改善したものの、今年は6.5〜7.0%への悪化が見込まれています。さらに、経常赤字を補っているのが海外からの証券投資という足の速い資金であることや、物価を考慮した実質金利の水準が低いこと、加えて、新興国通貨全般に対して、投資家心理が足元で非常に弱いことなどを考えると、トルコの状況は、海外から投資資金を惹きつけるには不十分だとみられます。

今回の総裁発言は、市場の信頼を損なうものであり、混乱につながる可能性もあるため、リラやトルコ資産にはしばらく警戒が必要と考えます。また、隣国シリアでアサド政権側が化学兵器を使用した疑いが強まり、地政学的リスクが高まっていることも懸念材料です。全面戦争に発展する可能性は低いものの、米国などがシリアに軍事介入する可能性が高まれば、原油価格が一段と上昇し、原油のほとんどを輸入に頼るトルコの物価や経常収支にマイナスの影響が及ぶ恐れがあります。

(2013年8月29日 日興アセットマネジメント作成)

●日興アセットマネジメントが提供する、国内外での大きなイベント発生時の臨時レポート「フォローアップ・メモ」からの転載です。→「フォローアップ・メモ」

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(日興アセットマネジメント)