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米国の量的緩和の早期縮小観測が強まり、それに伴なった資金の巻き戻しなどから、新興国通貨は下落基調が続いています。その中でも、ブラジル・レアルの下落幅が大きくなっています。

○ブラジル・レアル下落の要因

(1)期待を裏切った政策

ブラジルが、インフレを回避し、高い経済成長を継続するためには、構造改革やインフラ整備などの投資が不可欠と考えられるものの、政府はそれを後回しにしています。2003年のルーラ大統領の就任以降、経済重視型の政策や中国など世界的な資源需要の拡大、信用の伸びなどに牽引された個人消費の拡大などを背景に、ブラジル経済は高成長を遂げました。しかし、ルーラ大統領の政権下で経済成長率が高まった際には、低所得層の生活向上を優先し、2011年にルセフ大統領に交代した後も、景気の減速感が強まると、産業分野への介入を強め、電力料金や貸出金利を引き下げるように圧力をかける短絡的な政策を選択するなど、構造改革やインフラ投資を後回しにし続けました。そのため、足元で、ブラジル経済は低成長となったにもかかわらず、インフレ圧力が高まりやすい状況となったと考えられます。

(※上記グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)

また、金融政策を担う中央銀行は、輸出産業支援に向けての通貨安誘導(金融緩和)と、インフレ抑制に向けての通貨支援(金融引き締め)という、相反する施策の間を揺れ動いていましたが、4月にブラジル・レアル安に伴なうインフレ圧力の上昇を抑制するため、利上げに転じました。

しかし、その一方で、8月中旬にマンテガ財務相が、「ブラジル・レアル安は国内産業にとってプラスとなる」と述べるなど、ブラジル政府が「通貨安を容認」するような発言をしたことから、「インフレ抑制」と「景気回復」のどちらを優先するのか、政策に一貫性がないと受け取られ、ブラジルの政策運営に対する信認が低下し、ブラジル・レアルの見通しに対して不透明感が高まりました。

(2)経常収支の急速な悪化

ブラジル最大の貿易相手国である中国を含めて世界の景気回復が緩やかなものにとどまる中、ブラジルの貿易収支の悪化傾向が続いています。ブラジルの経常赤字は、貿易収支の悪化などを背景にここ数年で拡大し、経常赤字は2013年6月時点で約720億米ドル(12ヵ月累積ベース)と、同国GDPの約4%にあたる水準まで拡大しました。こうしたブラジルの経常赤字拡大に対する懸念の高まりなども、ブラジル・レアルの下落傾向が強まった要因の1つとみられます。

○ブラジル・レアルの見通し

ブラジル・レアルは、これらの要因などによって下落基調となりましたが、足元で少しずつ変化がみえ始めています。マンテガ財務相は、ブラジル・レアル売りのポジションを大量に持つ投資家に対して、今後ブラジル・レアル高に転じれば損失を被る可能性があるとの警告を発したほか、政府が為替介入する手段も複数あるとし、金融市場の安定化に向け、財務省と中央銀行が協力していくと表明しました。

(※上記グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)

中央銀行は、これまでも為替介入を行なってきましたが、8月下旬に、年末まで少なくとも600億米ドル規模の為替介入プログラムを発表しました。信認が低下してしまったブラジル・レアルは目先厳しい状況が続くとみられますが、このような政策は、市場に安心感を与え、ブラジル・レアルを下支えすると考えられます。

経常赤字については、海外からの直接投資や証券投資の流入によって補われています。今年6月時点では、直接投資の流入額が約650億米ドル、証券投資の流入額が約210億米ドルと、合計で約860億米ドルに達し、経常赤字の約720億米ドルを上回っています(数字はいずれも12ヵ月累積ベース)。加えて、6月に中央銀行が、海外投資家の債券などへの投資に対して課す金融取引税を6%から0%へと引き下げたほか、通貨デリバティブ取引に対する金融取引税も1%から0%へと引き下げたことなどを背景に、海外からの資本流入は足元で拡大傾向にあります。また、貿易収支も、6月には黒字幅が若干拡大しており、経常赤字の拡大に歯止めがかかる可能性もあります。

今後、ブラジル市場の信認が回復すれば、相対的に高金利であることなどの魅力が再確認され、ブラジル・レアルの下支えとなると考えられます。

ブラジルが依然として人的資本や天然資源の宝庫であることに変わりはなく、経済成長の潜在力は高いと考えられます。今後、政府が後回しにしてきた構造改革やインフラ投資に取り組めば、さらなる成長も期待できると考えられます。ブラジルでは、6月にインフレや汚職、公共サービスの質の低さなどに対する抗議デモが拡がり、ルセフ政権に圧力がかかりました。さらに、世論調査でルセフ大統領の支持率が足元で急低下しており、同政権が政策を改めなければ、2014年秋の大統領選挙での再選が危うくなる可能性が高まっています。中長期的な視点でブラジル・レアルを見通すうえで、構造改革などへの政府の取り組み姿勢が重要となっていると考えられます。

(※上記グラフ、データは過去のものであり、将来の運用成果等を約束するものではありません。)

(2013年8月29日 日興アセットマネジメント作成)

●日興アセットマネジメントが提供する、国内外での大きなイベント発生時の臨時レポート「フォローアップ・メモ」からの転載です。→「フォローアップ・メモ」

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(日興アセットマネジメント)